貴方に捧ぐのは-gr ページ10
彼女との出会い。
あれは、今でも昨日の事のように憶えている。
予定外の雨が降り困っていた時、車に乗せて貰ったんだ。
少年。乗っていきな！と俺の事を呼んだあの声も。忘れられない。
彼女の名前はA・ベールマー。
この国の高名な軍人だった。
沢山の功績を残し、讃えられた。
俺はそんな彼女に憧れと恋慕を抱いている。
今もまだその想いは変わらない。
自らの命の尽きた後だって、俺は彼女を愛し続けよう。
―――彼女は今、目の前の墓石の下で眠っている。
「しばらく忙しくてな。来れなかった。」
スターチスと煙草を供え、跪く。
「また一つ。勝利を収めたゾ！貴方の遺した情報や戦略のおかげだ。」
これは、俺の戦績ではなく。貴方のもの。
沢山の勝利を収めたのも。外交が上手く行くのも。
俺が幾分かサボらず、職務をするようになったのも。
全て、貴方という存在があったから。
「………なぜ、貴方を失わなければならなかったのだろうな。」
俺には、到底理解が出来ないよ。
あの時、あの戦が終わったら。
この想いを伝えるつもりだったんだ。
その願い虚しく、貴方はこの世を去ったが。
今からでも遅くない。
何度も何度も、貴方に伝えたい。
沢山の言葉を、届けたい。
立ち上がり、顔を上げて口を開く。
この小高い丘に響き渡るように、大きく息を吸い。
戦をする時のような不敵な笑みを口元に浮かべ。
世界一愛した貴女に、この言葉を捧ぐ。
「―――――、――――。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 211人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
でふぉ - すごく好きです。好きな作者さんばかりで、もっと早く読めばよかったと悔やんでおります。皆さん口調に違和感がなくて、入り込みやすくて好きです。ドキドキしたり、涙腺が少し潤んだりして、とても面白かったです。ありがとうございます。長文失礼しました。 (2019年8月22日 17時) (
レス) id: edb0d1df06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
