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誰かに頭を撫でられている。時々ばさばさと何かが羽ばたく音が心地よい。
瞼を開けると、目を腫らしている心配そうな顔のAが目に入ってきた。
「うお、っ」
腹を見ると服は血塗れだが完成に傷は塞がっている。使い果たした魔力も満たされていて、むしろ前より元気になったというか。
「……A……？」
先ほどから挙動不審のA。その頭には鋭い角が2本生えていた。
真っ黒い翼、うねる尾、尖った爪、震える白い牙。どれもが初めてみるものばかりだった。そして何より目を惹かれたのは朱色に輝く瞳。
「近寄らないでください！」
「っ……」
「兄さんを傷つけてしまいます……」
Aは目を擦るも涙は瞳から音もなく零れる。その手をどかそうとするも拒否される。
「……エルフちゃうんか」
「……私は、魔王の子孫です……」
「えっ」
「52番目の子供で、で、でも、人を食べたことなんてないです！人は怖くて、とても……」
えぐえぐと泣くA。
出会いはロマンチックなものではなかった。素材としてぞんざいに扱われ、殺されかけていたAを助けたのが始まりだった。
「でも、兄さんだけは好きです。私を助けてくれて、その上自由に生きろと言ってくれました。その言葉が嬉しかったんです。でも知られたくなかった。絶対に嫌われちゃうって思ったから。だから隠したんです」
「……」
「ごめんなさい。こんな爪じゃ、角じゃ、兄さんを抱きしめるなんてできないです。傷つけてしまう……」
泣きじゃくるA。俺はその小さな体を抱きしめた。
「だ、だめです、にいさん」
「……俺が抱き締めれば大丈夫や。、それより、助けてくれたんはそっちもやろ」
いつの間にか魔獣は消えていて重苦しい空気も分散していた。森が元通りになった証拠だ。
「ありがとうな、A」
肩が濡れていくが気にしない。魔王の子供というのは泣き虫なんだと笑ってやれば、むくれたAがいてまた笑ってしまった。
「急激な魔力解放で姿が変わるんですよ。一日くらいで元に戻ります」
「そうなんか。そういえば、魔力が回復してるんだけどこれもAがやったん？体液交換したん？」
「なっ……そ、それは……口からで、き、きっ……」
「き？」
「っなななんでもないです！帰りますよ兄さん！」
「お、おう？」
「今日の夕ごはんは白身魚のムニエルです！ホワイトソースをかけます！明日の朝は……」
この恋情に気付くのはどちらが早いか。それはまだ知る術もない。
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でふぉ - すごく好きです。好きな作者さんばかりで、もっと早く読めばよかったと悔やんでおります。皆さん口調に違和感がなくて、入り込みやすくて好きです。ドキドキしたり、涙腺が少し潤んだりして、とても面白かったです。ありがとうございます。長文失礼しました。 (2019年8月22日 17時) (
レス) id: edb0d1df06 (このIDを非表示/違反報告)
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