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「おかしい、やろ！こんなん聞いてへん！」
長い詠唱は追いつかず、簡単な詠唱と防衛術式を指先で繰り出しては角の一振で壊されるのを何度も繰り返す。
「A、もっと下がれ！」
「は、はい！」
Aは簡単な癒しの波動と気配遮断しか出来ないらしく、魔獣と離れたところでじわじわと回復をしてくれている。気休め程度だが、無いよりマシである。
「ランク�犬舛磴Δ鵑�……！」
この凶暴さと魔力量、十段階のうちランク�擦任呂覆い世蹐Δ�。そうだとしたら勝てる見込みはゼロに等しい。一級魔術師が束になってようやく勝てるくらいだ。自分なんぞが手に負えるものではない。
「防衛術式展開！」
魔獣は猛毒でぬらりと光る牙をがちがちと鳴らし、振り回す角から滲み出る毒の魔力は身体に浸透していく。
一刻も早く撤退しないと死ぬ。そう思いながら麻痺の魔術を辛うじて放つも難なく弾かれる。
「っ兄さん上！」
頭上に巨大な魔術陣が展開されていた。辺り一体を覆う程の広さの。
「逃げろA！はよせえ！」
「兄さんも一緒に」
「いいから！」
涙目で訴えるA。ろくに魔術を扱えないのに、毎回魔獣討伐に着いてくる。俺の回復をすると言って聞かないからだ。
今だって怖くてたまらないはずなのに、絶対にその場を離れようとしない。むしろ無理をして回復量を増やしている。
「……あかんな」
雷が落ちる瞬間、俺は回避効果をAの方に付与した。
せめて、Aだけでも。
「……兄、さん……！」
轟く轟音。体に走る痛みと衝撃。あまりにも痛すぎて声が出ず、血が口から溢れてくるのがぼんやりと分かった。
「兄さん、兄さん！」
ごめん、声出せんわ。強い人と契約せえよ、こんなしがない魔道士なんかより。この前行った花畑、また連れて行ってくるやれなくてごめん。いつも迷惑かけてごめん。それから、それから、
「やだよ……兄さん……」
毎朝ご飯、作ってくれてありがとうな。
泣かんといてや、はよ逃げて。もうすぐそこにおるから、早く。
Aは風穴の空いた腹を撫でて、必死に回復をしているが間に合わない。
「……兄さん」
咳き込むと溢れる血が頬を伝って喉を赤く濡らす。じくじくと痛むのも遠く感じる。
「……ごめんなさい、許してね、兄さん」
Aは俺の血塗れの体を抱きしめると、口元にそっと口付けした。
「……魔力、最大解放」
最後に見えたのは、真っ黒な翼だった。
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でふぉ - すごく好きです。好きな作者さんばかりで、もっと早く読めばよかったと悔やんでおります。皆さん口調に違和感がなくて、入り込みやすくて好きです。ドキドキしたり、涙腺が少し潤んだりして、とても面白かったです。ありがとうございます。長文失礼しました。 (2019年8月22日 17時) (
レス) id: edb0d1df06 (このIDを非表示/違反報告)
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