等速度運動‐tn ページ14
「屯先輩御卒業おめでとうございます。」
「ありがとな」
春の麗らかな光が彼を照らし桜が舞い散る中、私の頭を撫であなたはふわりと微笑んだ。
──あぁ、この会話もこれで3回目。
1回目は小学生の時。あの時は周りに将来はとんちゃんのお嫁さんになるのなんて言いふらして回ってた。
だから彼が卒業するのが嫌で嫌で顔を涙でぐちゃくちゃにしながら泣きついた思い出がある。
『いやぁ！とんちゃん卒業せんでぇ！！！！！』
「無理やわ！」
『とんちゃんがおらん学校なんて行かれん！！！！』
「泣くなって、家近いんやからいつでも会えるやろ、な？」
彼にしがみついて泣く私の頭を撫でて彼は必死に私を慰めてくれた。結局その日はずっと泣いてたけど。
2回目は中学生の時。小学生の時みたいに毎日を一緒に過ごすのは無理だったけれどそれでも彼は私が困った時、落ち込んでいる時など様々な場面でそばにいてくれた。テストの出来が悪かった時は厳しいご指導を頂いたりもしたっけ。あれだけはもう二度と経験したくない。
色んなことがあったけれど彼が卒業するのはやっぱり寂しくて泣かないぞと意気込んでいたのに式が終わる頃には大泣きだった。
『屯先輩、ごそつ、ごそつぎょぅう……』
「泣くな泣くな」
『とんちゃん卒業せんでぇ……』
「やから無理やって」
彼は呆れたように笑いあの日のように頭を撫でた。どうにかこうにか涙を堪えてお別れを告げる。絶対に同じ高校に行ってやるという目標を立てて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 211人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
でふぉ - すごく好きです。好きな作者さんばかりで、もっと早く読めばよかったと悔やんでおります。皆さん口調に違和感がなくて、入り込みやすくて好きです。ドキドキしたり、涙腺が少し潤んだりして、とても面白かったです。ありがとうございます。長文失礼しました。 (2019年8月22日 17時) (
レス) id: edb0d1df06 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
