Peach! (ページ8)

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単純に連絡が増えるだけならいいかと思っていたがどんどんとエスカレートしていく。約束のない日に会いたがり、連絡がつく前に会いに来る。ドラマの撮影と映画の撮影がかぶり睡眠が細切れにしか取れない状況では受け止めきれなかった。

携帯を見るのも億劫だった。あえて見ないまま家に帰りつき、お風呂から上がってようやく確認するといつものように連絡が来ていた。

元彼今日何時に終わる?
元彼家行ってええ?
元彼ごはん一緒に食べよな♡
前に作ってくれた肉じゃが食べたい!
グラタンも美味かったなぁ!
元彼まだ終わらんの?
元彼家の近くのコンビニにおるな
元彼まだ?
元彼A?まだ?
元彼返事もできひんの?
元彼不在着信 3件

彼も現在のわたしの状況は知っている、のに…休ませてくれるどころか料理を作れと言う。
もう無理だ。
でも、別れ話をする気力もない。

Aごめん、今の撮影が終わるまで会えません。
A連絡もすぐに返せないことが多いと思う。自分のことばかりで本当にごめんなさい。
少し時間をください。

送信し、気絶するように眠って、翌朝。
迎えの車に乗ってから携帯を見てゾッとした。

夥しい不在着信の数。
LINEを送信した2:00過ぎから現在までの間5分とあけず掛けてきている。寝ていないのか。仕事は大丈夫なのか。ひとまずメッセージの確認をしようとした瞬間、また携帯が振動し始めた。思わず出そうになった悲鳴はなんとか飲み込んだが携帯を取り落としてしまった。

自分でも手が震えているのがわかる。赤信号でこちらを振り返ったマネージャー、に、報告しなくちゃ…

ﾏﾈ「A？！どうした？！」
ﾏﾈ「お前…泣いてるじゃないか！」

知らないうちに涙まで出ていたらしい。

『か、彼氏…が…えっと…』

ﾏﾈ「落ち着け、ゆっくりでいい」

交際が始まった時に報告はしていたが近況は報告していなかった。深呼吸をし、別れたいと思っていることを含めなるべく簡潔に説明した。マネージャーはコンビニの駐車場に車を停め、口を挟むことなく聞いてくれた。

ﾏﾈ「状況はわかった。」
ﾏﾈ「また着信来てるな、代わりに出てもいいか？」

頷いて携帯を渡すと、マネージャーはついでに水を買ってくると車外に出た。

恐怖から解放されて安心したのか止まったはずだった涙がぼたぼたと膝に落ちた。