Peach! (ページ2)

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オリンピック公園からまっすぐにのびた道に風を防ぐ物はひとつもない。頬が冷たい、というよりもはや痛い。
吹き付ける風に震えながら新しく所属することになった事務所、JxP Entertainmentを見上げる。
新しく、美しいガラス張りのビル。

飛行機に乗るまでは十分にあたたかかったはずのコートもここでは役に立たない。用事が終わったらまずはダウンコートを買いに行くことを誓った。

約束の時間10分前。
そろそろ行かなくては。

建物へ入ると柔和な雰囲気の男性が迎えてくれた。30代半ば…身長は175cmを越えるくらいだろうか、俳優ですと言われても信じてしまいそうなほど清潔な印象だが彼がマネジメントをしてくれるらしい。微笑みながら彼の奥様は日本人だと言う。日本へ留学していた経験もあるそうで日本語もある程度話せるらしい。うまくやっていけそうで安心した。

マネージャー氏の案内で関係者入口を通り、会議室へ。
事前に協議していた通りの内容であることを確認し契約を終えた。今日は社長には会わないようだ。

これから半年が韓国でのデビューに向けての準備期間。とはいえ日本で出演していたCMを続投することは決まっているので練習生という身分でもなく…ちょっと特殊な扱いになるらしい。

関係部署、第一本部…への挨拶を済ませ、今日事務所でやることは終わり。他の所属アーティストさん達には事務所に居合わせたタイミングでご挨拶に伺うことになっている。

祖父が韓国人なので韓国語は読み書きできるし、用意された歌詞や台詞など、事前に準備をしておけば全く問題なく話せるが明日からはまず韓国語の授業を受けることになった。

事務所へ足を踏み入れる前に誓ったようにダウンコートを買いに行くと話すと、なんとショッピングモールへマネージャー氏が付き添ってくれることになった。マネージャーの仕事のうちだと言ってくれるが少し申し訳ない。だがそれ以上に心強い。

着替えを1日分とパスポートと通帳と印鑑と財布、携帯電話。これが日本から持ってきたものの全て。他はすべて処分してきた。家具はこちらで購入したものを新居へ運び入れてもらってある。
細々と買わなければならないものが多く、車で運んでもらえるのであれば本当に助かるのだ。