59.彼女はどこまでわかってる? ページ46
「東雲ちゃん」
「あ、汐恩くん」
撮影終わり。
全てのカメラが止まり練習生たちの着替えも済んで、帰り支度をしていた東雲に話しかけたのは鶴房だった。
「8位、おめでと」
「汐恩くんこそ、4位やん。おめでとう」
お互いがお互いを労い、ふふふと笑い合う。
一番最初に話した時こそ鶴房が東雲に「怖い」と言ったりと、決してポジティブな出来事ではなかったが今ではちょくちょく2人で並んで話している姿が見られた。
何がすごいかというと、彼女の隣では鶴房は大人しいのだ。
東雲の隣はなんだか落ち着く。
鶴房はそれが心地よく、気付けば肩の力が抜けてしまっていた。
「また一緒に合宿できるなぁ」
「ふふ、私と一緒で嬉しい?」
「は?別に嬉しないし」
「あれ、照れてる?」
「照れてへん!」
少し頬が染まる。
くすくすと笑う東雲はいつも通り美しく、別の意味でも顔が熱くなる。
誤魔化そうと慌てて別の話題を振った。
「また、しばらく家に帰れんようなるな」
「滋賀やったっけ?出身地」
「んー、うん。でも住んでんのは神戸」
「えっほんまに?私も実家神戸やで」
「うせやん!どこどこ?」
「岡本」
「うわー…金持ちやん…。想像はついてたけど」
「もう、そんなんちゃうよ」
「あ、家出中やっけ、今」
「うん」
少し気まずい空気が流れる。
目を伏せた東雲の表情は読み取れない。
鶴房は、あー、と迷いながらも言葉を繋げた。
「なら……俺んちくる?」
「へ?」
いきなりの言葉に思わず鶴房を見上げた。
バチリと目が合うと、自分が言った言葉の意味をそこでやっと理解する。
「いや、変な意味はないんやけど!ただ明日からの合宿終わったらまた日あくし、俺んちやったら地元には帰れるけど実家には帰らんでええから丁度いいかなって!」
慌てて言葉を繋げていく鶴房を見て東雲は思わず笑ってしまった。
一気に空気が明るくなる。
「んふふ、そうやなぁ。それもええかもなぁ」
「え…!」
まさかの肯定の言葉に鶴房はばっと勢いよく東雲の顔へ視線を向ける。
形の綺麗な目がキュ、と細まった。
「でも、汐恩くん男の子やから、やめとく」
また誰かに怒られちゃう、と肩をすくめて悪戯っぽく笑い、東雲はほなね、と手を振り去っていった。
顔が真っ赤になっている鶴房を残して。
「……ずっ………るいやろ、あれは……!なんなんあの顔、やばすぎる………!」
430人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「JO1」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
chia(プロフ) - かんなさん» ワクワクしていただいてめちゃめちゃ嬉しいです(TT)嬉しすぎて更新頻度上がってしまいました笑。とうとうら3もできたので、またチェックしてみてください! (2020年10月2日 23時) (レス) id: 4602b620e0 (このIDを非表示/違反報告)
かんな(プロフ) - 毎日更新されてるかな??ってワクワクドキドキしています!まだ半分すぎていないのがすごく嬉しいです!!まだまだchiaさんのお話しを読めると思うとすごく楽しみです! (2020年9月30日 17時) (レス) id: 7ce509c806 (このIDを非表示/違反報告)
chia(プロフ) - たなかさん» めちゃめちゃ嬉しいお言葉ありがとうございます…!誤字ございましたか…!すみません、修正できるように読み直してきます……!報告ありがとうござました(^^) (2020年9月30日 14時) (レス) id: 4602b620e0 (このIDを非表示/違反報告)
chia(プロフ) - rikoさん» ありがとうございます!完結まではまだ半分もいってないですが、最後まで頑張るので楽しんでいただければと思います! (2020年9月30日 14時) (レス) id: 4602b620e0 (このIDを非表示/違反報告)
たなか - 面白すぎて一気に読んでしまった……心情表現?がとてもわかりやすくて、心に刺さる感じが心地よかったです。ただ所々誤字があるのがとても残念です〜〜、、、、 (2020年9月28日 1時) (レス) id: 61583c7b25 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:chia | 作成日時:2020年3月18日 0時