71.同じステージへ ページ6
「蓮、まだ残ってるの？」
深夜。
Aは施設内に残る人がいないか最後の点検として各部屋を回っていた時、1人残って練習している川尻を見つけた。
「Aこそ……もう帰ったと思っとった」
そう言って、川尻は柔らかく笑った。
彼独特の緩い雰囲気とは裏腹に、着ているスウェットは汗で色濃く変色している。
「一旦ご飯食べて、戻ってきてたの。みんなの夜練みるために」
「そやったん」
「で、残ってるのはもう蓮だけだよ。明日もあるし、帰ろ」
少し眠たそうなAを見て、川尻はふふ、と口角を緩めた。
可愛いなぁ、なんて内心では思っていることなど彼女は知りもしないのだろう。
荷物をまとめ、待ってくれていたAと並んで歩き出す。
「……Aさぁ」
「うん？」
「このオーディション終わったら、何すると？」
「うーん…まだ決めてないなぁ。とりあえずアメリカ戻ろうと思ってるけど」
「そっか。またステージ戻るんだ」
「……わかんない」
予想外の返答に、川尻は思わず彼女の方に振り向いた。
それに気づいてはいるものの、Aの顔はそのまま前を見続ける。
「……やめるの？」
「ん〜、やめはしないけど」
初めてAをテレビで見てから、どうしようもなく憧れた。
いつか生でステージを観てみたい。
叶うことなら、同じステージに立ちたい。
その思いが彼のモチベーションの１つとなっていたのに。
初恋が実らなかったような、学校を卒業する日のような、そんな淡く切ない思いが胸を満たす。
そんな川尻を知ってか知らずか、Aはふわりと笑った。
「裏方にね、興味が出てきたの。演者じゃなくて、演出の方」
そう言う彼女の瞳はキラキラと輝いていて。
まるで子どものように笑うAが眩しかった。
「だからこの仕事も受けたんだよ」
「そうやったんや…」
「蓮たちを最高に輝かすために、何ができるか。お客さんを楽しませる為には、どうすればいいのか。最近はそればっかり考えてる」
Aの頭の中にはいつも自分たちがいる。
その事実が嬉しくて、照れ臭い。
「…じゃあさ」
「ん？」
「俺が合格したら、A、演出家として一緒に仕事しよう」
ぎゅ、と手を握られた。
川尻の手は熱い。
「…そうだね。その為に、私も演出の勉強めっちゃ頑張る」
Aは川尻の手を握り返した。
目を合わせて、笑い合う。
憧れだけで、終わらせない。
この手を握れる距離にずっといる。
川尻は心の中で、静かに決意した。
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chia(プロフ) - くまさん» くまさん！いつもコメントありがとうございます！かなり励みになっております……！S2も終わりかけてるのにまだS1完結してないですが、必ず完結させるので最後までお付き合いいただけると嬉しいです！ (2021年6月4日 21時) (
レス) id: 6a7a25a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - 更新ありがとうございます！楽しみにしてました:(^^)BO組尊い…とも尊い… (2021年4月30日 8時) (レス) id: ff03694f37 (このIDを非表示/違反報告)
くま(プロフ) - わー！！更新嬉しすぎます！ともとの絡み、やすぽんの最適なタイミングの登場最高です(*^o^*) (2021年3月6日 6時) (レス) id: 05901fdeb9 (このIDを非表示/違反報告)
chia(プロフ) - くまさん» コメントありがとうごさいます！返信遅れてすみません……！もうバレてしまってるかと思いますが、ゴリゴリのよなともるき推しでして笑。今後も彼らには頑張ってもらおうと思ってます！ (2020年12月3日 22時) (レス) id: 6a7a25a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
chia(プロフ) - rikoさん» コメントありがとうございます！返信遅れてごめんなさい……！最近このお話は更新できてなくてすみません……。こちらの方もしっかりと最後まで書き上げるつもりなので、最後まで楽しんでいただけると嬉しいです！ (2020年12月3日 22時) (レス) id: 6a7a25a7a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：chia | 作成日時：2020年6月16日 1時
