怪盗ラストVS我々だ!Ⅵ【d!】 (ページ44)

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Ⅳ-94個目　ともに歩もう、いつまでもページ44

［NOside］

グルッペンは走った。

走って走って走って、そして、着いた。

全ての始まりの地、彼らが生まれ育った

『ユーマルト』に。

激しく息切れをしているグルッペンは、息も整えることなく周りを見回しながら再び走る。

昔から何も変わらないユーマルトは村の子供が多かった。

カクハが逮捕されたからだろうか。

と、グルッペンの鼻がある香りを捉えた。

「!!」

その香りのする方向に向かう。

走っているうちに、見たことのない家を見つけた。

壁が白く、屋根は鮮やかな黄緑色の、木製の家。

その家を囲むように、ラベンダーの花が咲き誇っていた。

彼が捉えた香りは、ラベンダー。

「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」

そろそろ息を整えようと、深呼吸をする。

しばらくして、息を整えたグルッペンはその家に歩み寄った。

近付くたびに心臓が早鐘を打つ。

歩いていたのにいつの間にか小走りになり、途中、足がもつれて転びそうになった。

家まで、あと五メートルというところで、家の扉が開いた。

それにグルッペンは足を止める。

中から、白く美しい女性が出てくる。

その人は、グルッペンが探し求めた人で、一番会いたかった人で、

もう二度と、失いたくない存在で＿＿

「＿＿遅いんだよ、バーカ」

柔らかく微笑んだAへグルッペンは泣きそうな、それでも嬉しそうな笑顔を返して、

「＿＿うっさいわ」

彼女を抱き締めようと腕を伸ばす。

Aはそんな彼の腕の中に飛び込んだ。

ラベンダーの香りが二人を包み込み、この物語は幕を閉じた＿＿。

筈だった。

「はーはっはっはっ。この『深海の瞳』は俺が貰った!!」

「ちょ、A!!前見て走らないと…!!」

「え？…んぎゅふっ」

「ほら～言わんこっちゃない」

「追いついたでA!!今日こそはデートやぞ!!」

「げっ、もうゾムが来やがった。ハル、キヨを呼んでくれ!!」

「了解!」

「よし、これで脱出経路は確保した。あとはキヨが来るまで警察をもてあそぶのみ!!」

「何ですかそれ!!そんなことするんならこっちにだって考えがあるんですからね!!」

「おうおうショッピ君。いつにも増してイケメンじゃないか」

「えっ」

「はは、これぐらいで顔赤くしてたら俺を捕まえるのは無理だぞ～？」

「ショッピズルいゾ!!A、俺にも言えや!!」

「なぁーんでグルッペンが反応してんだよ!!ハル、予定変更だ。今すぐ逃げる!!」

「あッ待てー!!」

こうして、警察と怪盗の戯れは続いた。

end