怪盗ラストVS我々だ!Ⅵ【d!】 (ページ33)

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Ⅳ-83個目　残酷な運命ページ33

Aが今、したことは

自分の中にいるアインスに体を渡すということ。

Aは…本気でやるつもりなのだ。

俺の中にいる天使シュヴァルツから、その力を借り、悪魔であるレアルカを倒す作戦を。

シュヴァルツから教えてもらったことは、俺にとって絶望でしかなかった。

『Aは、レアルカを倒すためにアインスと俺の力が必要なんだ』

『天使の能力を貸すには、悪魔のアインスがいなければならない』

『そこで、Aは自分の体をアインスに渡すのを選んだ』

『…君は、そのままでいい。俺の力をアインスに渡す瞬間、俺は君から離れる。そして、もう二度と君の中には戻らないよ。それが一番良いことだからね』

『けど…Aは』

『Aは、“諦めてくれ”』

『正直に言ってしまえば、彼女は助からない。なにせ…』

『彼女の体に俺とアインスの膨大な力が入るんだ。あの子は強いけど普通の人間だから、絶対に俺達の力には耐えられない』

『だから…だから、それだけはわかっていてほしい』

『A本人が、承諾したのだから、俺達は止められない』

『……あの子には、申し訳無いよ…』

勿論、俺は反対した。

でも、結局はAがすべて決めることなんだ。

俺がとやかく言えることではない。

なら、一番近くで見届けさせてくれ……

Aの瞳が微かに揺れ、目を開けた。

しかし、オッドアイではなく紅い瞳。そして、美しい白髪。

『…すまない…。本当に、すまない…』

Aとは違う女性の声が、俺の耳に入る。

これが、アインスの声。

すまない、というアインスは、俺にもAにも言っているようだった。

『…シュヴァルツ、いいぞ…』

両手で顔を覆ったアインスが呟いた。

すると、俺の中から確かに、何かが出て行った。

体が軽くなって、力が抜けかかる。

それを支えてくれたのは、元悪魔のルディで。

「…グルッペン、俺達ができることは見守ることだけだ」

苦しそうにそう言ったルディの瞳には、涙が溜まっていた。

「っ…」

自分の力の無さを恨む。

くっ…

「＿＿くっそぉおおおッッッ!!!!!!」

拳を握って床を叩くことしかできなくて。

それが余計情けなく思えてきて。

レアルカと戦っているアインスの姿が、普段のAと重なって…。

悲しみと苦しみ、自分の無能さで押しつぶされそうになって＿＿

「グルッペン。おい、なに泣きそうな顔してんだよ」

Aの、そんな声が聞こえたような気がした。