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声に出した後にはもう遅かった。
思わず口を両手で隠す。
渡「なに?俺のこと知ってんの?」
「........」
全力で頭を左右に振る。
思った様に声が出ない。
だけど、なぜか安心感があって。
この人なら、心打ちを話せると感じた。
しかし、そんな勇気は今のわたしには全くない。
渡「...ずっと座ってるから。無視しようもできなかっただけ。
大丈夫そうならよかった」
そう言って、颯爽とどこかへ行こうとするなべさん。
わたしは、こんなチャンスはもうないかもしれないと悟った。
「ぁ.....あの!」
渡「....あ?」
さっきよりもすこし不信感があるのか。なべさんは少しわたしを睨んで返事をした。
「いや、その、〇〇大学って...どこですか...!」
渡「〇大?俺と一緒のとこじゃん」
「えっ!」
渡「まさか新入生?」
「はっ...はい!降りる駅がわからなくて」
そういうと、「入学式どうやって行ったんだ」とでも言いたげな表情をする。だけどさっきよりも、柔らかな雰囲気を漂わせていた。
渡「残念だけど、この駅じゃねえよ」
「えっ」
渡「〇〇駅まで降りてそっから徒歩15分もかかる。」
「えっ」
渡「この時間なら1限だろ?もう間に合わねえよ。」
「ええええぇ」
渡「なに。おまえ『え』しか言えねえのかよ」
少し口角をあげて笑う。
あ、わたしの知ってるなべさんであると察した。
「....あなたは、大学に行かないんですか?」
渡「俺?うん。さぼり」
「さぼり....」
渡「単位やべえけどな。」
単位とはいったいなんなのだろうか。
渡「じゃ、そういうことだから。頑張って大学いってらっしゃい。」
「あの!」
渡「あーもー!なんだよ!」
子供みたいにジタバタしようとするなべさんに、わたしは追い討ちをかける。
「大学まで連れってってほしいです...!」
渡「はぁ!?」
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mamemiya(プロフ) - 世界観がとても好きです。儚さと切なさも感じてとても引き込まれました。更新楽しみにしています。 (5月14日 19時) (レス) id: 8b0826854e (このIDを非表示/違反報告)
あきゃつき(プロフ) - もぐさん» コメントありがとうございます!私も掴みどころないふかざわさんを書きたくて書いているので嬉しいです(笑)更新がんばりまーす! (2023年5月3日 19時) (レス) id: 976116a13a (このIDを非表示/違反報告)
もぐ(プロフ) - 年上のふかざわさんの柔和で掴みどころのない雰囲気にきゅんとします。これからも作者様のペースで、更新楽しみにしております。 (2023年5月3日 17時) (レス) id: e4d225bc30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あきゃつき | 作成日時:2023年3月3日 18時