それぞれの朝 ページ1
マンションの隣り合う二部屋に住むそれぞれの住人は起床する。
一人は芸能人、かたや一人は極普通の女子高生。
けれど起床と共に思うことは同じであった。
『だるい眠い何もしたくない』。
無気力の極致である。
A「…………………」
裏道「…………………」
目覚まし時計に手を乗せ、ズルズルとうつ伏せになってから胴体の下に手足を縮め、そこからのろりと上体を起こした。
A•裏道『(また朝が来てしまった…………………』
そしてもう一度枕に顔を突っ込んだ。
そのまま静止すること3分。
朝という社会においての絶対的な相手に観念し、二人はそれぞれ朝食のために部屋を出たのだった。
Aroom
弁当箱を取り出して炊飯器の米を詰めようとすると、炊飯器の蓋が冷たい。
「……………」
これはまさかの。
カチリと蓋を開けると、空っぽの炊飯釜が鎮座していた。
まさかの炊き忘れ。
蓋を閉め、冷凍庫を探る。
冷凍チャーハンをチンして詰めるのだ。
「ない」
昨日の夜までは冷凍庫にあった冷凍チャーハンがない。大方父さんあたりが夜食に食べたのだろう。
では冷凍ご飯を、と思ったがこれまたストックがない。
よくよく見ればおかずになりそうなものも乏しい。
肉がない。弁当箱の隙間を適当に埋める重役、プチトマトもない。
あるのはどう考えてもデザート配役の大量の葡萄と食パン一枚。
うん。いかなる強者の主婦でもこの材料からまともな弁当を作るのは無理がある。
ということでまともな弁当を諦め、とにかく葡萄を詰める。二段の弁当箱の一段全て葡萄を入れ、もう一段にツナマヨ(チューブタイプ。超手軽)を挟んだ食パンを一口サイズに切って詰める。
彩も何もあったものではない。
1・5のペットボトル珈琲から珈琲をコップに注ぎ、牛乳も入れずにぐびぐびと飲み干す。
冷凍パスタをレンチンし、それを食べながら今日の天気をスマホアプリで確認する。
いつものルーティーン。
ず、と珈琲を啜りながら心の中で呟いた。
私何してんだろ。
土日ほぼ一瞬で終わるし。
仮病使おうにも授業速度速いから一日休むと単元変わってるし。
ーーーーーーーーーーいつか、いつか長い休みがあったら遠くに出かけよう。財布と携帯だけ持って好きなところに、あちこち廻るのだ。
「まあ無理だろうけどね」
悲しくなるほどリアリストだと思う。
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元、白玉の星 - どっちもどっちだなぁ…とっても面白いです!これからも頑張ってください! (2020年6月7日 21時) (レス) id: 5158f6f325 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:丙 | 作成日時:2019年6月7日 20時