犬系彼氏。 ♯K.tomohiro

5秒前 ページ27

「…っめた。」





ほっぺに触れた冷たさに驚いて、うっすら目を開けた。

見慣れた天井が視界に広がって、ここが家だと気が付く。

…あれ、私どうやって家に帰って来たんだろう。

桜と飲んでて、それに白石くんと松澤くんも入って
しばらく飲んで。




それでどうしたんだっけ？

まずい…完全に記憶が飛んでいる…






『…起きた？』





「うわ！」






ガバッと飛び起きた私を見て、ともは






『…そんな驚かんでもええやん…』






と、むっとしている。

冷たかったのはともの手か…

急に身体を起こしたせいで、頭がズキッと痛んだ。






『頭、痛む？

もう。飲みすぎるからやで。』






あほって言われながら、デコピンをくらう。





「…痛い。」





『それは潰れたAが悪……





ともが、言葉を止める。

それから何か考えるように、少し黙り込んで、再び口を開いた。





…いや、ちゃうな。
ごめん。そんなベロベロになるまで飲んだの、俺のせいやんな？』





予想外の言葉にびっくりして、ともの方を見ると、ともは困ったように眉を下げていた。





『俺、ついカッとなってまって、Aにひどい事言うて…

傷付いたやんな。

ほんと、ごめん。』





…違う。

悪いのはともじゃない。

自分勝手な理由でともから距離をとって、傷付けたのは私だよ。

それなのに、“彼氏失格やわ”なんて言って、苦笑いしているとも。





『…でもな、心配やったねん。

…帰って来てくれて、良かった…』





…どこまでこの人は優しいんだろう。

目に溜まった涙のせいで、ともの顔も、リビングもぼやける。





『…俺のこと、ほんと！いつでも返品出来るように手続きしといたから！
あ、違約金とか無いから安心してな！

あと交換もできるで！のんちゃんっていう奴おるんやけど、めっっちゃイケメンでな、俺のおすすめ。


って…何言うてんやろな笑


じゃ、俺会社に行ってくるから！』





ともは私の頭をポンポンってして、



“またな”



と言った。








…何が返品だ。何がおすすめだ。

返品なんてされたら、ともはどうなるの。

ほんと、最後まで他人優先。

あいにく、私はそんな事少しも望んでない。







“またね”なんて、絶対うそだって私でも分かるよ。

離れたら、もう会えなくなるに決まってるじゃん。

私は、ドアノブに手を掛けたともの背中に、思いっきり叫んだ。

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