犬系彼氏。 ♯K.tomohiro

9秒前 ページ23

お散歩の日から数日が経った。

…にも関わらず、私はともに対して、今まで通りの態度を取れない。

ともと出来るだけ距離を取りたくて、前よりも早めに仕事に行くようになった。

毎日のお見送りとお出迎えも、ともの顔をしっかり見て、“行ってきます” や “ただいま”が言えない。

家に帰っても、エサをあげたらすぐに部屋に籠って仕事をするようになってしまった。

このままではダメな事は分かっているけれど、自分の気持ちに気が付いてしまってから、ともと一緒に居るのがどうしても辛かった。

だから今日も、





「…じゃ、行ってきます。」




せっかくお見送りしてくれたともに、今日もそっけない態度しか取れずに、家を出て来てしまった。

何か言いたそうな、悲しそうなともの表情を無視してしまう自分が嫌だ。

仕事をしていても、ともの事を考えてしまって、ここ最近はミスを連発。

あの某(クソ)上司にさえ、




『Aちゃん最近大丈夫〜？

体調悪かったらサボタージュしても良いんだぜ☆』





なんて、よく分からない気の使い方をさせてしまっている。

たぶん私の部署の部長にも、このままでは仕事にならないと思われたんだろう。

私は部長から少し休憩をもらって、オフィスのカフェスペースでぼーっとしていた。

職場に私情を持ち込むなんて、自分も嫌だし、周りにも申し訳ない。

今までこんな事無かった分、焦りも大きかった。





「…ダメだなぁ。」





ぼそっと呟いてため息をついた時、後ろから肩を軽く叩かれた。





『そんな所でため息ついちゃって〜幸せ逃げるよ？』






「…桜。」





振り返ると、そこには桜が立っていた。





『Aがそんな負のオーラに包まれてるなんて珍しい。何かあった？』





どうしよう。

“この間買ったペットみたいな彼氏の事を、本気で好きになっちゃって、気まずくて困ってます”

なんて言えるか。

こんな事、現実味がなさすぎる。





「…ううん！なんにもない。大丈夫。」





『いーや！私にはお見通し。うそは良くないねぇAちゃん？』





「…はい。」





『とりあえず今日は一緒に夜ご飯食べよ！最近全然一緒に飲んでくれないんだもん。話はその時ね。
じゃ、いつもの店で！』





桜はそう言い残して、仕事に戻って行った。

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