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「今Aの目の前にいるのは、誰？」
「へ、」
「早く答えろ」
「う、うらたくん、です」
「そうだよ。今は俺が目の前にいるんだから、そんなこと言って逃げる口実作ろうとするなんて許さない」
また、だ。
逃げる口実を作ったつもりなんて一切ないのにそんなことを言って、うらたくんは一体何を怖がっているの。恐る恐る見上げた緑の瞳には海底のような底の見えない黒が渦巻いていて、私はすぐに彼から目を逸らしてしまった。
今、生殺与奪は全て彼の手にかかっているというのに彼は私を生かしてくれている。だから多分、うらたくんは私を手にかける気はないんだと思う。だけど、何かを恐れているからこそ、こうやって脅してくるのだと、そう私は結論づけた。
逃げ道なんてどこをどう見たってないのに、私が逃げられないようになのか、ぎゅうっと力を込めて二の腕を掴まれている。痛かった。感じているのは単純な感情なはずなのに、それは喜怒哀楽の中のどれとも形容しがたい。
この、胸の中で鉛のように重たく固まった感情はなんだ。言葉でも表せない。重たく、ただ私の腹奥に居座っている。痛くも痒くもないのに、ただ───不快だ。
「逃げるなんて言わないで。俺を拒絶しないで。A、受け入れるって言ってよ。今の俺でも愛して。もう離れたくないんだよ……」
「う、らた……くん……」
「こんな俺は嫌い？もう、好きじゃない？嫌いなら嫌いって言って。なにもかも、自分の言葉にしないと、伝わんないんだよ」
そう言うとうらたくんは下を向いた。ちらりと見えた彼の表情は薄暗く、まるで後悔でもしているかのような顔をしていた。
本当に何があったんだ。
零れないようにと絶妙なバランスで角度を保っているミネストローネが入った缶詰と、腕を掴まれた時に床に落としてしまったコッペパン。それを気にもせず、うらたくんはただ不安定にぐらぐらと揺れる感情を零していく。
うらたくんがこんなになるまで思いを曇らせた経緯を、せめてそれだけでも分かれば、彼を理解することが出来るかもしれないのに。
「大好きだよ……ずっと、会いたかったの。里親が見つかっても、何年離れてても、私の家族は四人だけだから」
カラン、と缶詰が落ちた音がした。私が先程まで零すまいとしていた缶は私が手を離したことで、真っ逆さまに落ちていった。
でもそんなものより、今は彼を優先するべきだと思った。彼を、抱きしめる手に力が込もる。
「嫌いになんて、なれる訳ないよ」
「ほんと……？」
「うん」
「嘘だったら、俺何するかわかんないよ」
「嘘じゃないから大丈夫」
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白雨(プロフ) - カエデさん» ありがとうございます〜！私の言葉で少しでも勇気を与える事ができていたら嬉しいです。カエデさんの人生がいいものとなりますように、陰ながら祈らせていただきます🍀 コメントありがとうございました◎ (4月22日 20時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！私もなにかと周りの大人に色々と狂わされた10代だったので凄いぐっときました。今はまだ人生立て直しを模索中ですが、白雨さんのあとがきで勇気をもらえました！ありがとうございます！！本当にめちゃめちゃ面白かったです！！ (4月21日 23時) (レス) @page50 id: fc5654a0ec (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - こゆきさん» コメントありがとうございます◎ 来月くらいには完結すると思いますので是非最後までお付き合い下さいませ〜！ (1月9日 23時) (レス) @page17 id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めっちゃ面白い！続きがすごく気になる、、、 (1月9日 14時) (レス) @page17 id: fe749953cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作者ホームページ：愛故のメリーバッドエンド。
作成日時：2023年12月14日 20時
