・ ページ48
坂田くんが言った通り、だんだん迫り来る炎のせいで暑くなってきた。額には汗が滲んでいる。
「あのね、私ね、今までずーっと心にぽっかり穴が空いた状態だったの。でもみんなに会ってから、だんだん心の穴が埋まっていくのを感じた……みんなのこと、恋しかったんだなって、ようやく分かった」
「俺もAが居なくなってからずっと寂しかった。でも、Aは幸せになってくれてるって信じとったから、あの地獄でも頑張れたんよ」
結局、頑張りきれなくてこうなっちゃったけど。
そう自嘲するセンラくんは、坂田くんとは反対側の手で私の手をぎゅっと握った。彼らの温もりを感じる。こんなに嬉しいことは無い。
だからもう、現実なんて良かった。
防音ルームをも埋めつくしてしまった炎はコンクリートには燃え移らず、中々ここまでは入ってこない。だけど炎が生み出した煙がどんどん入り込んできて、呼吸が苦しくなってきた。
「あかん、眠くなってきたかもしれん……」
「センラ、今までありがとな、おまえ、最高の相棒やったで」
「まーしぃも、最高やったで」
志麻くんとセンラくんが、互いに見つめ合いながらそう言って笑っていた。
「うらさん、助けてくれてありがとう。おかげで俺の体も汚れずに済んだ」
「俺の大切な相棒を助けるなんて当たり前だろ」
うらたくんと坂田くんも、笑いあっていた。
そして、志麻くんとセンラくんは私たちに最期の別れを告げて先に目を閉じてしまった。そしてうらたくんも、「おまえちゃんと告ってから死ねよ？」と言って坂田くんを肩で押すと、目を閉じてしまった。
告ってからって、もしかして。
「気使って貰っちゃったし……ちゃんと言うね。大好きだよA、俺と、来世では結婚して欲しい」
「今言うなんてズルいよ……」
「……返事は？」
「もちろん、いいに決まってる。来世では私のことお嫁さんにしてね」
「子供は3人くらい欲しいなぁ」
「大家族だね、私たち。みんなもいるし、面倒見てくれるだろうから、もっといてもいいかも」
「そうかも……幸せに、するね」
「うん、幸せにして」
だんだん眠くなってきた。こてん、と坂田くんがこちらに寄りかかってくる。私も、最後の力を振り絞って坂田くんの頭に寄りかかった。
全員が一酸化炭素による中毒で意識を失った頃、炎が勢いを増してついに倉庫の中へと入ってきた。
寄りかかった5人を、炎はいとも簡単に飲み込んだ。
少女が身につけていた四色のミサンガが、焼け落ちていく───────
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 252人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白雨(プロフ) - カエデさん» ありがとうございます〜！私の言葉で少しでも勇気を与える事ができていたら嬉しいです。カエデさんの人生がいいものとなりますように、陰ながら祈らせていただきます🍀 コメントありがとうございました◎ (4月22日 20時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！私もなにかと周りの大人に色々と狂わされた10代だったので凄いぐっときました。今はまだ人生立て直しを模索中ですが、白雨さんのあとがきで勇気をもらえました！ありがとうございます！！本当にめちゃめちゃ面白かったです！！ (4月21日 23時) (レス) @page50 id: fc5654a0ec (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - こゆきさん» コメントありがとうございます◎ 来月くらいには完結すると思いますので是非最後までお付き合い下さいませ〜！ (1月9日 23時) (レス) @page17 id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めっちゃ面白い！続きがすごく気になる、、、 (1月9日 14時) (レス) @page17 id: fe749953cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白雨 | 作者ホームページ：愛故のメリーバッドエンド。
作成日時：2023年12月14日 20時
