10.さよなら世界。 ページ43
「Aが、死にたいって言っててん」
「……は？」
「こんな世界捨ててみんなで死のうよ、って。明るかったAが、そんなこと言うなんて思わんかった。……ほんまに、Aは孤児院から出られて幸せやったんかな」
不意に呟いた志麻に対して、うらたは戸惑いを隠せなかった。
あれから、Aをこの建物の中ではまだ安全である防音ルームまで送り届けた志麻は、再びうらたとセンラの二人と合流した。そして外の様子を伺いながら、これからの事を話し合うために廊下にいた。
志麻の言葉を聞いた二人は、静かに俯く。するとセンラが小さく言葉を零した。
「……なんで俺ら、いつまで経っても幸せになれんねやろ。俺もう、期待するのに疲れた」
「正義のヒーローなんていないし、俺らの力じゃチビたちを守るので精一杯。もう心も体もボロボロだしな……俺も少し疲れた」
「……おまえらもだけど、坂田は特に恐怖症酷いから、この先もし社会に出たとしても普通に生活してけるとは思えんし……正直、俺もAの言うことは一理あると思うねん」
この世界はとうの昔に俺らを愛することをやめ、俺らのことなんて紙屑同然のように扱って奈落の底へと捨ててしまった。こんな世界なんて、こちらから願い下げだ。捨ててしまえばいいのだ。
自分たちが愛されていないことなんてとっくのとうに分かっていたのに、改めて自分でそうなのだと認識すると尚更悲しくなってしまって、志麻はAの言葉を何度も頭の中で復唱した。あの時の光景が、Aの表情が、頭から離れない。
俺が恋焦がれていた彼女は、あんなに悲しそうに笑う人じゃなかった。とびきり可愛らしい表情で優しく笑う明るい人だった。なにが彼女を変えてしまったんだろうと考えても、もう麻痺してきた頭じゃなにも分からなかった。
「……この建物って、木造やったよな」
「うん……火なんかつければ、よく燃えるだろうね」
「え、志麻くん、うらたん、それって、」
動揺したように声を上げるセンラに視線をやると、志麻とうらたは傷だらけの笑顔を浮かべた。そしてセンラは察する。もう、二人とも限界なんだと。
一週間近く、四人はこの緊迫した状況にずっと置かれていた。その中で今回初めに行動を起こした志麻とうらたは……最初に職員に手を掛けて殺した二人は、もう精神が壊れてしまっていた。たとえそれが自分を虐待していた人物だったとしても、人を殺してしまった罪悪感というのは一度芽生えれば永遠に心を蝕む。
「(……あぁ、もう、むりや、俺も、しにたい)」
こんな真っ赤な手じゃ、君の隣に居られない。
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白雨(プロフ) - カエデさん» ありがとうございます〜！私の言葉で少しでも勇気を与える事ができていたら嬉しいです。カエデさんの人生がいいものとなりますように、陰ながら祈らせていただきます🍀 コメントありがとうございました◎ (4月22日 20時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！私もなにかと周りの大人に色々と狂わされた10代だったので凄いぐっときました。今はまだ人生立て直しを模索中ですが、白雨さんのあとがきで勇気をもらえました！ありがとうございます！！本当にめちゃめちゃ面白かったです！！ (4月21日 23時) (レス) @page50 id: fc5654a0ec (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - こゆきさん» コメントありがとうございます◎ 来月くらいには完結すると思いますので是非最後までお付き合い下さいませ〜！ (1月9日 23時) (レス) @page17 id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めっちゃ面白い！続きがすごく気になる、、、 (1月9日 14時) (レス) @page17 id: fe749953cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作者ホームページ：愛故のメリーバッドエンド。
作成日時：2023年12月14日 20時
