6.救済への渇望。 ページ26
できる事があるかもしれないと、そう思った私は即座に駆け出した。
男の子に伝言を頼んでうらたくんたちが心配しないようにしてから、地下の防音ルームを出る。地下から地上へと登る階段を上がって廊下に出ると、キィキィと音を立てる床の上を走って私は事務室がある場所に向かった。
そして事務室へと続く廊下の曲がり角を曲がった時だった。何も考えていなかったせいで、私は不意に曲がり角の向こう側を歩いていたらしい誰かとぶつかってしまう。筋力のない私はただ少しぶつかっただけの衝撃で木製の床の上に尻もちを着いた。打ち付けた部分がヒリヒリと僅かに痛む。
痛さに喉から締め出したような呻き声を上げながらもその誰かに謝るために顔を上げると、そこには制服を着た金髪の男子がいた。
「う、いてて……」
「……A？」
「あ、せ、センラくん」
私が彼の名前を呼ぶと、センラくんは動揺したようにピクリと肩を揺らしながらも、はっとしたように「大丈夫？」と言いながら私を床から起き上がらせてくれた。
私が突然ぶつかってきた事がそんなに衝撃だったのか、センラくんは未だに目を泳がせて、でも時々チラチラとこちらを見ている。彼の行動には、まるで悪いことをしてしまった子供が謝るタイミングを伺っている時のような幼さがあった。
もしかして、昨日私にやった事を後悔しているんだろうか。それで、それを今謝ろうとしてるのかも。手紙で謝ってくれたし、私を気遣って桃の缶詰も置いといてくれてたんだから、もう十分誠意は見せてもらったのに。
「センラくん、えっとね、」
「A、どこ行こうとしてたの？」
「え？えと、事務室にある裏口から外に出ようと思って」
「は？」
とりあえず話し掛けようと思った私の言葉を遮った上、外に出ようとした、と発言した私に低いドスの効いた声を出したセンラくん。
そこで、彼が私が離れようとすることに異常に反応していたことを思い出して、ハッとした。目の前には怒った顔のセンラくん。ぶわりと肌が粟立つ感覚がする。怖くなってしまって後退りする私を壁まで追い詰めると、彼はダン！と勢いよく私の顔の横に手を着いて逃げ場をなくした。
そしてこちらに顔を近付けると、怯えるばかりで何も言えない私に諭すように言葉を零す。
「外は危ないんよ、分かっとる？俺らをこんなにした大人がうじゃうじゃおんの。おまえまで失ったら、俺どうすればええん。お願いやから、離れてかんでよ。やめて、もうこれ以上奪わないで」
「せ、センラくん……？」
「いかないで」
私は、そう言った彼の顔を見て息を飲んだ。
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白雨(プロフ) - カエデさん» ありがとうございます〜！私の言葉で少しでも勇気を与える事ができていたら嬉しいです。カエデさんの人生がいいものとなりますように、陰ながら祈らせていただきます🍀 コメントありがとうございました◎ (4月22日 20時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！私もなにかと周りの大人に色々と狂わされた10代だったので凄いぐっときました。今はまだ人生立て直しを模索中ですが、白雨さんのあとがきで勇気をもらえました！ありがとうございます！！本当にめちゃめちゃ面白かったです！！ (4月21日 23時) (レス) @page50 id: fc5654a0ec (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - こゆきさん» コメントありがとうございます◎ 来月くらいには完結すると思いますので是非最後までお付き合い下さいませ〜！ (1月9日 23時) (レス) @page17 id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めっちゃ面白い！続きがすごく気になる、、、 (1月9日 14時) (レス) @page17 id: fe749953cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作者ホームページ：愛故のメリーバッドエンド。
作成日時：2023年12月14日 20時
