5.目を逸らせない。 ページ21
「A、ちょっとここで待ってて。一歩も動いちゃダメだよ」
うらたくんはそう言うと、私を倉庫の入口付近で待つようにと指示してきた。しかもきっちりと一歩も動かないようにという事まで言われてしまったので、私は困ったような笑みをこぼしてしまう。
別に逃げないのになぁ。
そんな私をチラチラと見ながらも坂田くんの元へ早歩きで向かった彼は、しゃがみこむと坂田くんの体をゆさゆさと揺さぶった。
「坂田、大丈夫か？」
しばらくなんの反応もなかったが、次第に起きたのか坂田くんが軽く呻き声のようなものを漏らしながら起き上がったのが見えた。どうやらかなり深い眠りに落ちていたようだ。
その後はコソコソと二人で何か喋った後に、彼らは立ち上がってよろよろと覚束無い足取りの坂田くんを、うらたくんが支える形で歩き出した。
二人で何か話していた時に私のことを聞いたのか、坂田くんは私をちらりと見ると少しだけ肩を揺らした。坂田くんが足を止めたことで、二人の歩みが止まる。どうしたのか分からなくて戸惑っていると、うらたくんが小さく坂田くんに話し掛けたのが聞こえた。
「……Aなら、平気そう？」
「分からんけど、嫌では、ない、かも」
会話の意味が分からなくて困惑していると、再び歩き出した二人は、私の方まで来ると少しだけ距離を取ったまま立ち止まった。
暗がかった緑と赤の瞳が、私を射抜いて離してくれない。二人に無言で見つめられるという謎すぎる状況に、なにか言葉を発するべきなのかと迷っていると、最初に動き出したのは坂田くんだった。
小さな声で「うらさん、離して」と言うと、その言葉に従って支えていた腕を離したうらたくんから離れる。そして真っ直ぐに私の方に来ると、坂田くんは私にガバッと抱きついた。
「さ、坂田くん……？！」
驚く私を他所に、坂田くんは何も言わずにまたぎゅうぎゅうと抱きしめる力を強めた。突然のことに事態が把握できない私は、抱きしめ返す事もできずに放心状態となる。
え、え、これは、どうするべき？なんか声を掛けるべき？それとも思いっきり抱きしめ返すべき？
色々と考えたものの何も分からなかった私は、とりあえず彼の腕の中で大人しくしていた。しばらくして満足したかのように私から離れると、坂田くんは少しだけ濁りのある深紅の瞳で私を見つめた。
「A、もうどこにも行かないで」
それは、この数十時間で私が何度も彼らから注ぎ込まれた言葉だった。
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白雨(プロフ) - カエデさん» ありがとうございます〜！私の言葉で少しでも勇気を与える事ができていたら嬉しいです。カエデさんの人生がいいものとなりますように、陰ながら祈らせていただきます🍀 コメントありがとうございました◎ (4月22日 20時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！私もなにかと周りの大人に色々と狂わされた10代だったので凄いぐっときました。今はまだ人生立て直しを模索中ですが、白雨さんのあとがきで勇気をもらえました！ありがとうございます！！本当にめちゃめちゃ面白かったです！！ (4月21日 23時) (レス) @page50 id: fc5654a0ec (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - こゆきさん» コメントありがとうございます◎ 来月くらいには完結すると思いますので是非最後までお付き合い下さいませ〜！ (1月9日 23時) (レス) @page17 id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めっちゃ面白い！続きがすごく気になる、、、 (1月9日 14時) (レス) @page17 id: fe749953cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作者ホームページ：愛故のメリーバッドエンド。
作成日時：2023年12月14日 20時
