・ ページ20
「ちゃんと飯食った？」
「食べたよー！」
「うらた兄ちゃんも遊ぼ！」
うらたくんが部屋に入った瞬間押し寄せるようにこちらへ向かってきた子供たちが、一瞬にして彼の周りに集まる。
なんていうか、昔は年長の後を大人しくついていってた感じだったから想像できなかったけど、うらたくんは孤児院の皆にとっての頼れるお兄ちゃんになってたんだ。
逞しくなったその姿に感心したが、その分少し悲しくもなった。私が知っているのはもう昔になってしまったあの頃の彼であって、今のうらたくんのことは何も知らないんだと思い知らされた気がしたのだ。
かなり慕われているらしく、うらたくんは引っ張りだこで大変そうだったが、私はそれを少しだけ複雑な気持ちで眺めていた。
「後で遊んでやるから、今は他の奴らと遊んでろ。分かったな？」
「うん！約束だからねー！」
指切りげんまんしてから離れていった小さい子に手を振って、次に抱っこしてと迫られたためにその子を軽く抱っこした後に、彼は他の子の相手もしていた。
慣れているのか小さい子達の相手を難なくこなしていて、やはり頼れるお兄ちゃんという感じだった。さすが最年長組の中でも一番年上なだけある。
そして、あれからしばらくして近くにいる男の子の頭をわしゃわしゃと撫でたうらたくんは、隅の方でうらたくんの方を見ていた子を見つけると不意にその子の名前を呼んだ。
「坂田ってどこにいる？」
「坂田兄ちゃんなら、奥の部屋で寝てるよ」
「そっか、ありがとう。A、こっち来て」
うらたくんは私の方に振り返ると、手招きして私を連れて部屋のそのまた奥に向かった。
子供たちは私に見覚えがない為、不思議そうな目で私を見ている。さすがに、私が孤児院にいた頃の子でも小さい頃の記憶はないか。見たことがある気がする顔はあるけど、私も分からないし人のことは言えないのだけど。
自分に刺さる視線に耐えきれなくて小走りでうらたくんの横に行くと、それに気づいた彼に手を握られた。さすがにこんな地下の防音ルームまで来て逃げないのに。
相変わらず信用ないな、私。そう思いながら歩いていると、私がいた頃は倉庫になっていた場所にうらたくんは入っていった。私も彼に手を引かれて中に入ると、やはり中は倉庫になっていて少しだけ埃っぽかった。
こんな所で寝てるなんて大丈夫かな、なんて思っていると、ふと床に敷いたタオルの上に赤髪を散らして寝はいっている制服姿の青年がいることに気がついた。
間違いない、あの燃えるような赤髪は坂田くんだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 252人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白雨(プロフ) - カエデさん» ありがとうございます〜！私の言葉で少しでも勇気を与える事ができていたら嬉しいです。カエデさんの人生がいいものとなりますように、陰ながら祈らせていただきます🍀 コメントありがとうございました◎ (4月22日 20時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！私もなにかと周りの大人に色々と狂わされた10代だったので凄いぐっときました。今はまだ人生立て直しを模索中ですが、白雨さんのあとがきで勇気をもらえました！ありがとうございます！！本当にめちゃめちゃ面白かったです！！ (4月21日 23時) (レス) @page50 id: fc5654a0ec (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - こゆきさん» コメントありがとうございます◎ 来月くらいには完結すると思いますので是非最後までお付き合い下さいませ〜！ (1月9日 23時) (レス) @page17 id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めっちゃ面白い！続きがすごく気になる、、、 (1月9日 14時) (レス) @page17 id: fe749953cc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白雨 | 作者ホームページ：愛故のメリーバッドエンド。
作成日時：2023年12月14日 20時
