3.入眠。 ページ11
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うらたくんは床に落ちてしまったミネストローネと缶を片付ける時だとしても「危ないからAは座ってて」とか言って、私が落としたのに片付けを手伝わせてくれなかった。
お皿が割れた訳でもないのにただの缶を片すのがそんなに危ないのだろうか。さすがに過保護過ぎやしないか。そんな風に悪態をつきながらも、フローリングの床を拭く彼を眺める。
情緒が不安定なのかな。怒ったり縋ってきたり甘えてきたり、色々な彼を見たけどどれも曖昧な感情のようで、分かりやすく、それはまるでぐらついた心が透けて見えるように明白なものだった。
ここまで感情が不安定なのも、もしかしたら彼らが起こした立てこもり事件と関係があるのかもしれない。だってあの情緒不安定なものは動揺に近いもののように見えたし。そう思いながら、私は無事だったコッペパンを一口齧って咀嚼した。
そして、床を掃除しているうらたくんをじっと見つめる。
見ないうちに大きくなった背中は、あの頃とは違って逞しかった。私よりも低かった背も今となっては高くなりいつの間にか越えられてしまっていて、大人の男の人に近づいている幼馴染みの体に離れていた年月の長さを感じる。
だって、彼らは間違いなく私の大好きな幼馴染みなのに、別人みたいなんだもん。
「終わったよ、A」
「うん。ありがとう」
「じゃあそろそろ寝るか」
「うん……え？」
私たちが腰掛けていたベッドの中に潜り込むうらたくんに対して思わず普通に返事してしまったが、彼はもう寝てしまうらしかった。私さっき結構寝ちゃったから眠くないんだけども。
そう思って彼を見たけど、何故か彼も私を見つめていたようでじっとこちらを見つめている緑の双眸と目が合った。黒々とした暗色が混ざっているものの、翡翠のような色の美しい瞳である。思わずドキリとした。
「…………ここ、入らないの？」
「え」
「俺と一緒に寝るよね？他のとこなんか行かないよね？」
「他のとこには行かないけど、一緒に寝るの……？」
「嫌？」
「嫌じゃ、ないけど……」
私が言葉を濁らせると、分かりやすくうらたくんの顔が悲しみに歪んでいくのが見えた。その瞳は潤んでいて、今にもその瞳から透明な雫を溢れさせてしまいそうなほど悲しげなものに満ちていた。
こ、これは……断れる訳ない……！
負けた私は渋々彼が、ここ来て、と言って軽く叩いて見せたベッドのスペースに寝転んだ。白い天井が、やけに近くにあるように感じた。
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白雨(プロフ) - カエデさん» ありがとうございます〜！私の言葉で少しでも勇気を与える事ができていたら嬉しいです。カエデさんの人生がいいものとなりますように、陰ながら祈らせていただきます🍀 コメントありがとうございました◎ (4月22日 20時) (
レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - 完結おめでとうございます！！私もなにかと周りの大人に色々と狂わされた10代だったので凄いぐっときました。今はまだ人生立て直しを模索中ですが、白雨さんのあとがきで勇気をもらえました！ありがとうございます！！本当にめちゃめちゃ面白かったです！！ (4月21日 23時) (レス) @page50 id: fc5654a0ec (このIDを非表示/違反報告)
白雨(プロフ) - こゆきさん» コメントありがとうございます◎ 来月くらいには完結すると思いますので是非最後までお付き合い下さいませ〜！ (1月9日 23時) (レス) @page17 id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
こゆき(プロフ) - めっちゃ面白い！続きがすごく気になる、、、 (1月9日 14時) (レス) @page17 id: fe749953cc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作者ホームページ：愛故のメリーバッドエンド。
作成日時：2023年12月14日 20時
