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誘惑するような目だった。
僅かに火照った頬に、蕩けたような表情。初めて自分に向けられる煽欲的な感情に戸惑った私は、なにも出来なくなってしまう。
そんな私を少し前屈みになった状態で下から上目遣いに見上げながら、坂田さんは頬は赤く染めたまま嬉しそうに微笑んだ。そして絡めていた指先は解かずに、口元まで持っていった私の手の甲にちゅう、と音を立てながら口付けをする。途端に自分の顔が熱くなっていくのが分かった。
柔らかい唇の感触とか、熱い指先とか、熱を宿した視線とか、全てが私をパニックにさせる要素を持っていた。訳が分からなくなった私は自分が何を言っているのかも理解できないままに呟く。
「む、むり……」
「え」
「ッ、い、い加減、離れろ変態！！」
思いの他、その拳は相手にクリーンヒットしたらしかった。ドスッという鈍い音と共に、坂田さんが背中側に倒れたのが見える。
……やりすぎたかもしれない。
▽
▽
私が拳を突きつけた鳩尾がまだ鈍い痛さを孕んで、ぼぉっと熱が灯るように時々腹の中心が熱くて痛いというなんとも言えない症状に苛まれるらしい。
痛そうにしているのを見ると申し訳ないことをしたとは思ったが、あれは正当防衛なのだ。まぁパニックになっていたとはいえ、まさか自分が坂田さんのことを殴ってしまうとは思わなかったけど、でも坂田さんが悪いし仕方ないよね。そう思うことにした私はこれ以上何も気にしないことにした。
「ていうか、あなたほんとに誰なんですか。ここもどこだか分からないし、なんでここに居るのかも全然思い出せないし……」
「だから俺は坂田だってば！あとここは桃源郷！！」
「桃源郷？」
聞き慣れない単語に、頭の中にはクエスチョンマークばかりが浮かんだ。桃源郷って、昔話だとか日本の神話的なもので出てくる理想郷ってやつだろうか。
そんなの伝説であって実際にはある訳がない。だって、人類は自らが住む地球すらも滅ぼせるほど進んだ科学力を持っているが、そんな世界があるだなんて聞いたことも見たこともない。化学で解明できないような場所が現実にあってたまるか。
リアルな感触があるので間違いなくここは夢の中ではなく現実世界なのだ。そんなことあるわけない。
「その顔は信じてないなー？」
「だ、だって、桃源郷ですよ？古典の授業とかで何回か聞いたことありますけど、そんなの現実にある訳ないじゃないですか」
「あるんだってば！もぉ、どうしたら信じてくれんの」
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李 雨月(プロフ) - かわいい私が好きさん» その言葉がいただけて字書き冥利に尽きます(照) タイトルもこだわっているので褒めていただけて嬉しいです。コメントありがとうございました〜！ (2022年11月8日 22時) (
レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
かわいい私が好き - 題名だけでドタイプを貫いていたので覗いてみたらもう最高の作品に出会いました👐✨これからも読み続けます😉 (2022年11月4日 20時) (レス) @page12 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - みこさん» 一コメですよ〜！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！コメントありがとうございました◎ (2022年10月17日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
みこ - 一コメ、、、？めっちゃ面白いです！ありがとうございます！更新楽しみに待ってます！ (2022年10月10日 15時) (レス) @page11 id: 3112c05530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作成日時：2022年9月19日 21時
