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「(あれ……？)」
神社の目の前までついたのに、私は何気なく足を止めた。
お、おかしいな。なんでだろ、この鳥居をくぐったらいけない気がする。
一瞬だけそんな訳の分からない考えが頭をよぎって、私はまた混乱した。なんなの、今日。本当に私おかしくなっちゃったみたい。いや、そういえば今日は朝から家族の様子もおかしかった。嫌な予感がした。鼓動が早まって、呼吸が苦しくなる。
やだやだ、こわい、なにこれ、早くお母さんとお父さんに会いたい……！！
ろくな思考を持てなくなった私は冷や汗が滲んでいる拳をぎゅっと握って、去年塗り直したばかりで綺麗で立派な鳥居をくぐった。足を一歩踏み入れて、恐る恐るもう片方の足も鳥居の中に踏み込ませる。
「(…………あれ……？な、なんだ、何も起こらないじゃん……よかった)」
なんて安堵したのもつかの間。
突然、そよ風と共に春に香ってくる花の甘い香りが鼻腔を刺激した。そして今は桜が咲く時期なんかじゃないというのに、背後から吹いてくる風に乗って桜の花びらが宙を舞っているのが見える。
なにかおかしい。そう思って振り返ろうとした時、いつの間にか背後にいた誰かによって目元を手で覆われて視界を奪われた。遮られた視界。背後にいる誰かも分からない人の気配。状況なんて全く分からないけれど、とにかく抵抗する為にその視界を覆う手を退けようとして、私はその手を掴む。
しかし、耳元で囁くように声を吹き込まれ、面白いくらいに自分の体から力が抜けるのを感じた。
「俺の花嫁さまは強情やなぁ」
「っ、な、んで……力、入んな……」
自分を支えることすらままならず、ついには誰かも分からない相手に体を委ねるしかできなくなっていた。それでも香る甘い春の匂いは、私の心境とは裏腹に体の緊張を解いてしまい、私は体を強ばらせることすらできなくなってしまった。
そんな時だ。遠くから、焦ったように誰かが走ってくる足音が聞こえたのは。
「Aを返して！！その子は大切な私の娘よ！」
すぐに分かった。お母さんの声だ。
体が弱いんだから、無理なんてしないで欲しいのに。走ったりなんかしたら危ないのに。こちらに手を伸ばすお母さんの姿が、ぼやけ始めた視界の中でうっすらと見える。
私は驚いていた。いつも笑顔を絶やさず優しく微笑んでいたお母さんが、泣いていたから。
その涙を拭いてあげたいのに、もう私には瞼を持ち上げる力すらも残っていなかった。暗くなっていく視界。それに比例するように遠のく意識。
「(……なんで、こんなことに……)」
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李 雨月(プロフ) - かわいい私が好きさん» その言葉がいただけて字書き冥利に尽きます(照) タイトルもこだわっているので褒めていただけて嬉しいです。コメントありがとうございました〜！ (2022年11月8日 22時) (
レス) id: 8fe15b8549 (このIDを非表示/違反報告)
かわいい私が好き - 題名だけでドタイプを貫いていたので覗いてみたらもう最高の作品に出会いました👐✨これからも読み続けます😉 (2022年11月4日 20時) (レス) @page12 id: 28b1a8c3b0 (このIDを非表示/違反報告)
李 雨月(プロフ) - みこさん» 一コメですよ〜！面白いと言っていただけてとても嬉しいです！コメントありがとうございました◎ (2022年10月17日 0時) (レス) id: 2d25cdcdc2 (このIDを非表示/違反報告)
みこ - 一コメ、、、？めっちゃ面白いです！ありがとうございます！更新楽しみに待ってます！ (2022年10月10日 15時) (レス) @page11 id: 3112c05530 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白雨 | 作成日時：2022年9月19日 21時
