シャーロット家と過去 ページ3
「シャーロット家の名に恥じない立派な商人になりなさい」
「レイラ、しっかりしなさい。貴女はシャーロット家の一人娘なんだから」
これが、レイラの両親の口癖だった。そう言われると、決まってレイラは
『わかりました』
と、短く答える。シャーロット家、ヴァニタス市の中では名が知れていた。様々な商人と繋がっていたのだ。薬屋、肉屋、魚屋、八百屋、……裏の世界の商人とも。
そのおかげで、莫大な資金が手に入り、立場こそ一般市民であったがそこまで素封家と変わらない優雅な暮らしが出来た。
そんな絶大な権力を持つ、シャーロットの商人を継ぐ。レイラの父は大変名誉な事だ、と言っていた。確かにレイラもそう思った。この事は非常に名誉な事なのだと。だが、レイラはその事をあまり嬉しく思っていなかった。
それは何故か、それは小さい頃からずっとその事ばかり聞かされて嫌になっていたのかも知れない。
そもそも、まだ幼かったレイラには荷が重かったのかも知れない。
その理由はレイラ自身でもよく分かっていない。前者か後者か、あるいは両方だったのかも知れない。何故か、レイラはその事に対して笑顔を向ける事ができなかったのだ。
その頃からレイラは夜に散策をする様になった。危ないのはレイラも分かっていたが、この夜の時だけは両親の期待という枷から放たれている様な気がしたのだ。
いつもの様に両親の目を盗み、音を立てずにゆっくりと扉を開ける。そして扉の隙間からするりと体を入れ、またゆっくりと扉を閉めた。
きょうはどこへいこう。レイラは思考を巡らせる。空を見上げると、大きく、神秘的な煌めきを秘めた月が見えた。海が近いからか、少し潮の匂いがした、様な気がした。
『うみにいこう』
レイラはそう小さくぽつり、と呟くと、音を立てない様に気を配りながら一直線に走った。住宅街を駆け抜け、畑や田んぼを駆け抜けた、少しずつ潮の匂いが強くなって行く。そしてジメジメして薄暗い洞窟に入り、足を止めるとハァ、ハァと荒く呼吸を繰り返した。ゴツゴツした壁にもたれかかり、体に酸素を送り込ませていると、どこからか声が聞こえた。
「こ、これが……悪魔……！？」
その台詞に、レイラは目を見開く。悪魔。まともな人生を送りたいならそれは絶対に関わってはいけない。その事は勿論レイラも知っていた。それが、その悪魔が……いる？
レイラは思わず後ずさる。どうしよう、そんな言葉がレイラの頭を埋め尽くした。
否、選択肢は決まっている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜美（別垢） - すふ丸さん» コメントありがとうございます( ´∀｀)AA君見た目可愛いしそれなのにお金にがめついってギャップあるし、クレール君もピアスやヘアバンドとか付けているのに性格が少しオカンな所とか二人とも素敵なキャラだったので使わせてもらいました！ (2018年8月18日 20時) (
レス) id: dea702fe4f (このIDを非表示/違反報告)
すふ丸(プロフ) - あああAAの野郎を出して下さり有難うございます！AAのキャラやがめつい所とか凄く合ってます、ジョロキア設定やクレールの奇物製造機設定とかも使って頂けて本当に感謝です……レイラさんの過去編とのことでこれからの更新も楽しみにしております！ (2018年8月17日 22時) (レス) id: 587e915dae (このIDを非表示/違反報告)
亜美 - 檸檬@被ノエ募集企画主催さん» ちゃんと貼れました！わざわざURLを書いて下さって本当にありがとうございますm(__)m (2018年8月5日 18時) (レス) id: eec90ae86f (このIDを非表示/違反報告)
檸檬@被ノエ募集企画主催(プロフ) - これで出来なかったら打つ手無しですかね…… (2018年8月5日 17時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
檸檬@被ノエ募集企画主催(プロフ) - (image:http://img.u.nosv.org/uploader/files/d/6/0/d605e3d2088e3844cfdad063d1586f4b.jpeg)←ジュリアン帽子あり(image:http://img.u.nosv.org/uploader/files/6/b/5/6b5a4b15833c4c7c2a49cbd19cdab038.jpeg)←なし (2018年8月5日 17時) (レス) id: 3524d9e2e8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜美 | 作成日時：2018年8月1日 21時
