甘い想いを君に。【そらる】

君 ページ6

そして私は放課後、帰るにも帰る気になれず教室で黄昏ていた。

「はぁ……」

さっきからずっとため息をついている。

学校だから泣くわけにもいかない。

「せっかく作ったのになぁ……」

一人でそうポツリと呟くと、何処からか何かが溢れて目に涙がたまる。

持って帰っても仕方ないなぁ……。

そう思って、バッグからぐちゃぐちゃになったチョコレートケーキを取り出して、昨日一生懸命丁寧にやったラッピングを開封する。

やはりチョコレートケーキはぐちゃぐちゃになっていて、人にあげるなんて到底出来ない見た目になっていた。

チョコレートケーキの破片を口の中に放り込む。

丁度良く甘くて、ほんのり苦い。

「おい……しい……なぁ……。」

頬に温かい何かが伝ったのがわかった。

なんでもっと先を見て行動出来ないんだろう。

そんなことを思っても、チョコレートケーキがぐちゃぐちゃになった事実は変わらない。

今回こそはとずっと思って準備してきた。

今回こそは一ノ瀬君に想いを伝えようと。

神様は意地悪だ。

涙が滞りなく溢れてくる。

嗚咽を押し殺して、静かに教室で一人ただただ泣いていた。

他の人から見たら、失恋したと思われるかもしれない。

きっとどっちみちこの想いは報われなかったのだろうけど。

「渡したかったなぁ……」

「何が？」

後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。

反射的に後ろを向くと、そこには一ノ瀬君がいた。

なんでここにいるの……？

に→←を

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す