そう遠くない、未来の自分 ページ17
五条さん。私の義兄、その人が、幼い姿をして私の前にいた。
……あ。思いっきり、目が合ってしまった。普通に、私の存在に気づいたんだろう。
「お前、だれ」
幼い五条さんが話しかけてきた。
震える唇をそっと開く。つむぐ言葉が白く吐き出された。
『あなたの、妹』
その声は自分のものとは思えないほど大人びていて、高校生ほどの年齢を感じさせた。
さらりと、私の髪の毛がほおに当たる。膝を抱えて座っている、自分の姿が見えた。
胸の下ほどまで伸びた髪。すらりとして、ほっそりした腕と足。オーバーサイズの服にひそむ、わずかな膨らみを秘めた胸。視界の端に光る、五条さんの制服についていた、文様が描かれたボタン。
つまり、少し大人びた姿をしている、ということ。現実の私はまだ11歳だというのに、どういうことなんだろう。
きっとここは夢なんだから、あまり気にしないでいいところではあるけれど。
「は、お前が妹?んなわけないだろ」
『雪菜。雪菜の、娘』
幼い五条さんは目を丸くした。ただでさえ丸い目がさらに丸く見える。
私は微笑んで、その頬に手を伸ばす。ほんのりとした冷たさが、伝わってきた。
『はやく中に入りなよ。冷えちゃうよ、お兄ちゃん』
「お、お前は……」
『はやく迎えに来てね、待ってる』
“私”はそう言うと、幼い五条さんの額にとん、指をあてる。
その衝撃に、幼い五条さんはふらりと揺れた。そして、倒れる……というときに、“私”が支えた。
お兄ちゃんにもこんなに小さいときがあったんだ、なんて言いながら椅子まで幼い五条さんを運ぶ“私”。自分が動いている様子をそばから見るなんて、不思議な気持ちになる。
“私”は幼い五条さんを椅子に横たわらせると、こちらに歩を進めて戻ってくる。そしてその目は、確実に私を見ていた。
気づかれた、なんて身構える。身構えたって、丸腰だからなにもできないんだけどね。
“私”は身構えた私に気づくと、ゆったりと笑った。優しい笑みだった。その顔は、さっきの母ととても似ている。
『もう、起きな。五条さんが待ってる』
“私”はさっき幼い五条さんにしたように、私の額に指をとん、と当てた。
少し視界が揺らいで、まぶたが下がっていくのが分かった。その揺らいでいく視界で、私は“私”の顔を見た。
その目の奥には、空を閉じ込めたような色が、ほのかに光っていた。
そのまま、私の意識は深い闇へと吸い込まれていった。
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ツバメ - 甚爾と(彼女?)妹と偶然出会って知り合いにもなって欲しいです (2022年2月8日 18時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
ツバメ - 面白いし五条さん妹愛ばかになりつつあると思うけどそれなりに仲良いと思います この子には凄く難しいかも知れませんが伏黒甚爾生存で彼をなんだかんだで助ける事出来ませんか?闘うのも有りですがやっぱり甚爾だけがいなくなってしまうのはダメかもと思うのです (2022年2月8日 18時) (レス) id: e61b67cd9c (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 屑女また企んでそう (2022年2月3日 12時) (レス) @page26 id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - すっごい好きすっごいなんかもう好き(語彙力とは)、、、最初からここまで一気読みさせていただきました!1話1話の内容がとても面白くて、もっと読みたい!って思えました!!!更新を楽しみにしています。応援してます!!! (2022年1月8日 20時) (レス) @page12 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
善(プロフ) - 五条達に悪女こそが家族と洗脳の術を使い、夢主ちゃん見ず知らずの誰あんたみたいな術をにしておく (2021年12月31日 6時) (レス) id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
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