◇ 秘密 ページ10
＊
「二人が秘密を話さなかったらどーすんの？ 俺とケンカする？」
「……私は？」
「Aは秘密なくない？ コーカイシュギだし」
「……初めて言われた」
ショートコントのようなやり取りをし始める花子くんとA。この流れだけで花子くんがAに対してどう思ってるかが伺える。
しかしA自身がそれを否定しようとしない。故に、花子くんも包丁を片手に目を丸くするだけであった。
「……で、どーする？」
「まさか。依代は渡しますよ。だが腹いせにお前らの恥ずかしい秘密を校内放送で垂れ流してやる」
一緒光と寧々は安堵したがそれも束の間。先生と怪異というダブルポジションを持つ土籠の仕返し(？)に、顔を酷く青ざめる。
この場で秘密を吐き捨てるよりも、もっと阻止すべきことだった。
「そっ、そそそそんなハッタリつつ、通じねーぞ！」
「ほォ？ まァまァ面白かったぞこの本」
光の初々しい態度を目の当たりにしながらも、土籠は不気味な笑みを浮かべる。そして手に取り始めたのは、寧々の名前が刻まれた分厚い本だった。
管理人だからこそ、知っていることだ。きっと何でもお見通しなのだろう。
「ま、そういうことだ。そんじゃァ、精々俺を楽しませろよォ、ガキ共」
「顔すごいわよ」
†
「行きます！」
そして、何故かゲームのような大会のような雰囲気の中で、二人の秘密暴露大会が幕を開けることになった。
トップバッターは、自身の本に書かれたポエムという名の黒歴史を目の当たりにした寧々。
「私の秘密は……ちゅ、中学の頃、想像上の彼氏とひとりで交換日記を付けてたことです！」
「三点」
「どうしてぇ！？」
火照った表情で恥ずかしい秘密を打ち明けた彼女に、土籠は非道にも即興の点数すら付けた。しかもまさかの一桁。
せっかく、隠し通すはずだった秘密を暴露した挙句の仕打ちに、寧々は相当なダメージ負った。
「一つ、それくらい知ってる。二つ、どうでもいい。三つ、お前嘘ついてるだろ」
「わ、私は嘘なんか！」
図星をつかれたのか、寧々は肩を震わせて顔を白くする。言葉ではああ言ったものの、その仕草から嘘つきがどちらなのかは一目瞭然である。
土籠は続ける。
「そうかァ？ 中学の頃なんて言っといて今も付けてるじゃねェか、ひとり交換日記」
「うっ！」
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