◆ 交換日記……？ ページ11
＊
「しかも相手はそいつの兄貴」
「え」
「へー」
寧々は嘘を指摘された上、立て続けに相手までをも暴露されてしまった。甲高い悲鳴をあげる彼女を、花子くんは絵に描いたような糸目で見つめる。
「先輩、兄ちゃんと交換日記してるんすか？」
「やめて突っ込まないで！」
この数秒間だけでかなりのダメージを負った寧々だが、最大の敵は光の純粋さであった。想像上の彼氏、その実の弟なのだから、彼女のメンタルは更に削られる。
そして土籠はとあるページを開き、まるで朗読劇かのように読み上げる。
「○月×日──。今日の全校集会、壇上で生徒会長としてお話しする先輩、素敵でした！ でもでもっ、あんまり寧々の方ばっかり見ちゃダーメ！ 私たちの関係は他の人には内緒なんだから！」
これまた少女漫画顔負けの文章。とても人に言える内容ではないものを、この場にいる全員に知られてしまった。
「全校集会があったこと以外は全部妄想だ」
「やべー」
「寧々ちゃん……」
「いやあぁぁぁ！」
バッシングと哀れみの視線を受け、ついに耐えきれなくなったのか寧々はバタンと倒れる。
この魂の抜けたような仕草を見てしまっては、同情するななんて無理な話だ。
夢見る年頃の乙女なら何ら可笑しくないことだろうとAは思ったが、それすら何処か皮肉めいているように聞こえたのは気のせいだろうか。
「先輩！ クソッ、よくも先輩を……！ 次はオレの番だ！」
「はいはいどうぞ」
面倒ながらも子の守りを命じられた人間の如く促され、発言権が光に与えられる。
「オレは……！ 実は、節分の鬼の面がものすっげー怖い！」
「あ、次の人どうぞ〜」
「なんでだよ！」
土籠の光に対する反応は酷くそっけないものだった。人間だろうが怪異だろうが生徒と先生、もとい担任だという事実は変わらないが、今だけはその距離感も崩れ去ってしまったらしい。
寧々とはベクトルの違う意味で可愛らしい秘密であったものの、適当にあしらわれるくらいには興味を引き寄せなかったのだろうか。
「もっといい情報をもらえませんかねェ。それとも、諦めて校内放送いっちゃいます？」
当の本人は何だか余裕ぶった態度で蜘蛛の巣にぶら下がる。しかし情報屋である土籠にかかれば『秘密』なんて情報は今の今までのうち、いくらでも知る機会があったはず。そう簡単には打破できない。
しかし、寧々と光は強く粘った。
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