† 猫みたい？ ページ2
＊
「あなたたち、七不思議に興味があるの？」
目を塞ぎたくなる、あるいは鬱いでしまいそうな美貌が問いかけた。
放課後の図書館。木漏れ日のように窓から夕日の光が差し込み、少女の美しさをより際立たせた。
「えへ……。ま、まあそんな感じでして……」
一瞬困惑の顔をしたが、すぐ照れるような表情に切り替わり寧々は答えた。
ペリドットの瞳は彼女ではなく、彼女が手にする本をじっと見つめた上で、落ち着いた口調で話す。
「花子さん……ああ、猫みたいな子よね」
「えっ？」
予想外の言葉に寧々はもちろん、遥も目を丸くした。
猫？ あの可愛らしく気まぐれな愛玩動物？ 花子くんが？
ニャンニャンと手で猫の真似をする少女に、寧々は再び問う。
「気まぐれでワガママで、甘えたさん。あなたたちの所もそう？」
窓際に体を寄せ、艶しい印象を与える仕草をする少女。
彼女が語る花子くんは二人が知る花子くんとは大分かけ離れている。
しかし『あなたたちの所』というセリフから、Aは疑問の意を感じた。花子くんは二人以上いるといった解釈をさせる言葉だからだ。
彼女が知る花子くんと自分らがいつも会う花子くん、これらが同一人物でないと考えるしかない。この思考回路は、あの花子くんが猫なわけないという絶対的な考えからだった。
艶やかな髪を靡かせて、彼女は
「七不思議の五番の所へ行くといいわ。あの子について知りたいならね」
「あ……っ！」
謎めいた言葉だけを置き去りにした彼女を寧々は追おうとする。図書館の先にいる人物など視界に入っていないようだ。
そしてAの制止の声すら遮って走り出した。
あまりに急いでいたせいで、頭を劈くような音が響く。
「ギャーっ！？」
途端に事件性を帯びたサウンドが館内を巡り廻った。前方をよく見ていなかったのか、寧々は誰かと衝突してしまったらしい。
「なっ、なんですかあなた。ダメですよ、図書館で走っ」
「どいてください！」
ネームプレートを提げた長身の男性とともに床に倒れる。彼が抱えた本や紙が散らばっているものの、寧々はそれらを拾うわけでもなく退けて扉の外へ走り出す。
「……いない……」
──無人の階段には、微かな人気ですらもなかった。
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