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背後から聞こえる、聞き慣れた声。
頭上を通過する赤い手袋。
ふっと体を後ろに引かれ、ぶつかったその体。
甘い香りをかき消すように、彼のタバコの匂いが漂った。
「……銃兎さん」
名前を呼べば、銃兎さんはこっちを見て一瞬だけ微笑んだ。
そして耳元で「逃げろ」と告げられる。
「後ろに俺の部下を待機させてる。だから、そいつのとこまで逃げろ。わかったか？」
コクリ、と頷くと「いい子だ」と笑って私を動きやすいように人混みから離れた道の端に押し出してくれた。
銃兎さんの言った通り、後ろにはスーツ姿の男の人がこちら側を気にしながら立っていて、私に気がついたのか、こっちこっち、と手を振ってくれている。
その人こところまで必死に走って、今更襲ってきた恐怖から、思わずその人に飛び込んだ。
「大丈夫ですか!?」と受け止められ、安心から込み上げてくる涙を必死に堪えながら、うん、と頷く。
「Aさんですよね？ 銃兎さんから話は聞いてます。ここに居ては危ないので、とりあえず署まで避難しましょう!!」
「はい……あの、銃兎さんは」
「後から来ます、さ、早く」
そう言われて大通りの路肩に止められたパトカーに乗り込む。
微かにタバコの匂いがした。
- - - - - - - - -
無機質な白い部屋、その中央に置かれた黒いソファとパイプ椅子。
後で銃兎さんも来ますのでこの部屋で待機しててください、と言われて数十分。
スマホがないから、連絡もできないし、窓はシャッターが閉ざされていて外の状況も分からない。
まるで監 / 禁されてるみたいな状況だ。
一体いつになったら銃兎さんは来るのだろう。
さっきの男を捕まえるため色々大変なのは分かるけど、だったらせめて何か時間を潰せる物でも部屋に置いといて欲しかった……
スマホがないと何もすることないのに。
「早く来ないかなぁ……」
扉の前にしゃがんで見上げてみると、自分が犬や猫になったような感覚に陥る。
早く開かないかな、という期待に似たワクワク感。
あぁ、ご主人を待つ犬や猫の気持ちってこんな感じなのかな。
ガチャ、と扉が開く。
開けたのは銃兎さんで、しゃがみ込んだ私と目が合って足を止めた。
数秒の沈黙。
そして「何やってるんですか、貴方は」と心底呆れたように言われた。
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おたくちゃん - ｺﾞﾊｧ（吐血）最推し...尊い... (2021年5月7日 21時) (
レス) id: 210f23da0b (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - コメント失礼します。一気読みしてしまうくらい面白かったです。そして、めっちゃドキドキしました(*´ω｀)この物語、大好きです！ (2021年1月3日 20時) (レス) id: e7a52269e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：月斗。 | 作成日時：2020年12月17日 7時
