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談話室の前を通る。今日も賑やかな声が聞こえる、たわいもない話だ。自由時間に見たテレビとか、噂話とか。
そんな話をうんうんと頷きながら聞くのが俺の気になっている子、コックリちゃん。
もちろん本名は知らないので勝手に呼んでいる。彼女はほかの女子たちとは違って滅多に男子に話に行かない。女の子であっても気が知れてるであろう数人と。それでもやり取りはほぼ頷くだけ。だからコックリちゃん。
「ところで隣の教場の萩原くんさ…」
自分の名前が聞こえタチが悪いが聞き耳を立てる。
「すっごくイケメンだよね!!」
あらやだ。結構言ってくれるじゃないの。
同じ教場の子が一緒にお昼を食べてて羨ましかったとか、隣の松田くんはカレー頬張ってて可愛かったとか、そうか、割と俺たち噂になるんだ。
コックリちゃんもなかなか楽しそうに会話に参加している。「Aはどう思う?研二くんのこと。」
これは急展開だ。声が聞けるチャンス。更に耳をすました。
今更だがコックリちゃんはAちゃんと言うらしい。
フルーツ牛乳を飲みながら一息ついたコックリちゃん、もといAちゃんはゆっくりと口を開けた。
「かっこいいし、お話してみたいな…でもね…?」
うんうん…でも??
「萩原くんは、アイドルだから…私は見てるだけでいいの。」
「まったくー、相変わらず奥手だなぁ。Aは。」
「まぁ、Aらしいじゃない。」
俺をアイドル視している奥手な彼女。
今日は声が聞けただけでも進歩したか。
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作者名:ceylon | 作成日時:2022年5月15日 21時