C'est la vie. (ページ10)

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黄 side

中「……あ」

気づいたら右手にカッターナイフを持ってて、左の手首からはぽたぽたと血が流れる。

やってしまった、そう気付くと同時にずるずると床に座り込む。

ズキズキと痛みを主張する手首にどうしたらいいのか呆然とする。

中「……消さな」

無意識にメッセージを送ってたようで、消そうと手を伸ばす。

ピコン。メッセージを取り消そうとしたタイミングでの通知に思わず手が止まる。

いまいく、そう簡潔に書かれた文字をただぼーっと見てるしかなかった。

家に来てからてきぱきと治療を進めていく濵ちゃんはいつもと違うくて。

くらくらと貧血気味で揺れる景色に、そう言えば最近ろくにご飯食べてないなあ……なんて思考を飛ばす。

まって、ほんまにあかんかも。

中「……っ、」

吐きそうになって慌てて目の前のタオルに手を伸ばす。

けど、ろくに食べてないからか出てくるのは胃液ばかりで。
吐き気は一向に収まる気配もない。

濵「吐けへん？」

心配そうに見てくる顔に頷く。いつの間にか手の届くところに空になったゴミ箱が置かれてた。

濵「ちょっとごめんな」

そう言って濵ちゃんの指がぐっと喉に入ってくる。
せりあがってくる感覚に濵ちゃんの指を抜く。

ビシャビシャとゴミ箱に吐瀉物が落ちる音がする。
口を渡された水でゆすぐ。

中「……疲れた」

いまだ焦点の定まらないまま呟けば、ふわっと持ち上がる体。

抵抗するまもなくベッドに寝かされる。
状況を把握する頃には足元は高くあげられてて。

濵「片づけるから休んどくんやで」

せかせか動く濵ちゃんをぼーっと見てたら、いつの間にか寝てた。

目を覚ますと漂う美味しそうな匂い。
ここ最近久しく嗅いでなかった匂いに、体は空腹を訴えてて。

濵「寝れた？」
中「うん、久々にすっきりしたわ」

寝室からリビングに出ると机には胃に優しい料理が並んでた。

中「……美味しそう」

そう呟くと濵ちゃんの顔がいつも以上に明るくなる。

そんな濵ちゃんの顔を見てると職場で悩んでたこととかが、どうでもよくなってきて。

「ありがとう」なんて照れくさくて聞こえないよう呟いた。

fin