C'est la vie. (ページ4)

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緑 side

「誰も降りて来おへんなあ」
「ほんまやなあ」

淳太がそう言うから時計を見ると7時。
いつもならみんな起きてくる時間やねんけど、珍しい。

「あと15分したら起こしてくるわ」

淳太はお医者さん。ここのオーナーさんが経営してる病院で働いてるらしい。
物知りで周りをよく見てて、人の変化にすぐ気付く。

俺がこの家に来た時の淳太は分厚い本を何冊も広げてた。
一心不乱に本を読んで、その時は分からんかったけどあんま食事も睡眠も取ってなかったんじゃないかな。

濵ちゃんや照史が心配して怒ってる声が家中に響いてた。

あの後15分経っても誰も降りて来おへんたから淳太が起こしに行った。
淳太が起こしに行けば降りてくるのも時間の問題で、机の上に完成した料理を並べる。

「濵ちゃん手伝ってー」
「んー？ええよー」

クラッチ杖で体を支えながらゆっくり移動する。
ほんまはクラッチ杖なしでも歩けるは歩けるけど、1度ここで盛大に転んでからは必ず持つように言われてる。

俺が移動してる間にテキパキと朝食を並べてくれてる濵ちゃん。
俺がキッチンからリビングのテーブルに着く頃には全ての料理が机の上に並んでた。

「神ちゃん、今日は足大丈夫なん？」
「全然大丈夫やで」

俺の左足は膝から下が麻痺して動かへん。
普段は動かんし痛みも感じんくせに、たまに不随意運動を起こしたり痛みを感じることがある。

数日前に不随意運動を起こして立ってられんくなってたから心配かけてたんやと思う。

しばらくするとドタドタと階段を下りる音がする。
それから淳太の走り回るなと怒る声。

あ、淳太悲鳴上げた。きっとしげにちょっかい掛けられてんな。

「おはようー！！」

思いっきり扉を開けて大声で挨拶するのはしげ。
朝から元気なんはいつものこと。

その後ろには引っ張られてきたんか流星が不機嫌そうな顔をして立ってる。

「あー！神ちゃん金髪やん」

しげがそう叫んだことによってフラフラ彷徨ってた流星の視線が俺の髪に向く。

そのまま歩いてきた流星に控えめにきゅっと抱きつかれる。
サラサラと髪を触られる感覚。

「神ちゃんの髪、綺麗」

俺の髪色が変わる度にこうやって触ってくる。
流星曰くキラキラ光って綺麗らしい。

そんな流星は自閉症。
ゆっくりやけど、必要最低限の会話はできるし、かなりマイペースでこだわりもそこまで強くない。それとサヴァン症候群。色彩感覚に優れててファッションセンスがいい。