恋に名前を (ページ3)

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Vol.2 2択のご褒美ページ3

『何で呼ばれたか、心当たりある？』
「…進路希望調査ですか」
『ちゃんと分かってたんだ』
『なんで白紙で出したの？』

何も答えられなかった。
多分私は誰かに心配して欲しかったのかもしれない。
別に白紙で出さなくても、
自分の学力でいけるそこそこの大学に進学できればいいと思っていたから、そう書いたってよかった。
誰も私の進路に反対する人なんていないだろうし。

『やりたいこととか興味のあることとかないの？』
「…ないです」
『そっか…』
『まぁまだ2年の初めだし、進路の希望が定まってる人の方が少ないからゆっくり考えてみな』
『でも、とりあえず先生達の会議に必要だからその希望調査、来週には出して』
「…はい」
『でもさ〜びっくりしたよ』
『Aが、そんな大事な書類白紙で出すなんて』
『今までそんなこと無かったろ』

『なんかあったら言えよ』

その一言が欲しかったのかもしれない。
肩の荷が降りた気がする。
頼ってもいい人がいるんだ、ってそう思えた。

最後にそう言った橋本先生は、私の表情を見ることなくプリントを纏めていた。

“あんたのしたいようにしたらいいんじゃない”
自分の仕事に夢中の母はよくそう言った。
父は海外への単身赴任とやらで、もう長い間顔を合わせていない。
誰も私のことに興味ない、と思っていた。

でも違うのかも。