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帰りのタクシーに揺られながらだらだらと昔の事に思い耽っていると、突然ゆずるさんに話しかけられる。
河井「なぁ、ほんまに賢志郎と同じ高校やったん?」
『あぁ、うん。そうなんですわ。
なんで疑うんですか笑』
河井「いや、俺に話した事無いやろ?
知り合いなの知ってたなら、話してもいい話題やったのにな〜って思って」
そう言われてぐっと喉をつまらせる。
"ただの"友達だったら、とっくにゆずるさんには話してる。
『…まぁ、理由が理由なんで』
何となく言葉を濁すと、ゆずるさんはまだ言い足りなそうな顔をした。
河井「なんや、理由て」
『あ、運転手さん。私ここで大丈夫です
ゆずるさんありがとうございました』
ゆずるさんの声を遮り、お金を払って車から出る。
そこまで深追いされる理由はない。
ただ、ずるずる昔の恋を引きずってるイタい女なだけだ。
家へ向かおうと足を運んだ。
河井「待てや」
『………え』
呼び止められ振り向くと、荷物を持ったゆずるさん。
後ろではタクシーが発車していく。
『なんで降りちゃったんですか、ホテルまで距離ありますやん…』
河井「今日のお前なんか変やわ」
『……なんで』
河井「賢志郎に会うてからや。何かされたん?」
『なんにもされてないですよ。
嫌ってくらい。』
その言葉を聞いて察したのだろうか、ゆずるさんは黙りこくった。
『じゃあ帰りますから、ゆずるさんもタクシー捕まえて帰ってください』
河井「俺やったら」
『え?』
河井「俺やったらそんな苦しそうな顔させへんから」
そう言って見せた静かな瞳は、いつに無く真剣だった。
それだけ言ってゆずるさんは帰っていった。
『…どういう意味やねん』
ゆずるさんって普段あんな思わせぶりな事、
言う人やったっけ?
ゆっくりと、歯車が動き出した。
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黒鈴蘭(プロフ) - メイさんお久しぶりです!新作も読んでくださり嬉しいです…!これからの展開もお楽しみに! (2020年3月16日 19時) (レス) id: 1c72f7160c (このIDを非表示/違反報告)
メイ(プロフ) - 新しいお話ありがとうございます!川西さんとゆずるさん、2人の間でどんな展開になるか楽しみです。 (2020年3月15日 0時) (レス) id: 24f8e2afc7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒鈴蘭 | 作成日時:2020年3月12日 22時