249.彼の蜜香←10/26 ページ9
半年ぶりの二宮さんの部屋
ここで過ごした時間より
イギリスで過ごした時間の方がはるかに長いけど
それでも玄関に立つだけで安心感に何だか視界が滲む
「ただいま…」
返ってこないとわかっていても
それが言える今の幸せに唇を噛み締めて
靴を脱いで部屋へとあがった
半年前と何等変わらない
リビングを抜け2階に上がると作業部屋へ
道具はイギリスにあるから寂しさはあるものの
作業部屋も何も変わることなくあって
変わっていたのは"変わらない"事だった
埃１つない部屋
作業台も綺麗に拭かれている状態で
棚もだけど全てにメンテナンスが行き届いていた
作業部屋を出て
簡単にシャワーを済ませると流石に体力の限界で
引き込まれるようにベッドに倒れた
二宮さんの香りと
洗いたてのリネンの香り
たったこれだけの事に至極幸せだと頬がゆるむ
スマホを見る気力もなく手放した意識
朝目覚めたら二宮さんに会えますように…
あたたかな温もりに包まれる感覚
目を開けなくてもそれが何かわかる
ゆっくり
目蓋を開くと
二宮「おはよ？」
目の前には起き抜けの彼が瞳を優しく歪め私を見ていた
「…おはようございます」
柔らかく撫でられた髪に目蓋を閉じ彼の体温をより身近に感じる
二宮「よく眠れた？」
「はい」
二宮「それはよかった」
「二宮さんは……昨夜は何時に？」
二宮「日付変わる前には帰ってきたよ」
「それなら待ってればよかった」
二宮「朝から可愛い事言うね」(笑)
急にぎゅーっと抱き締められた身体
「にっ、二宮さん」
彼の胸から聞こえる鼓動とは真逆に朝には不釣り合いな鼓動を刻む私の心臓
二宮「大丈夫、今朝はあまり時間もないからね」
ほどなくしてゆるめられた腕に
「直ぐにお出かけですか？」
彼はゆっくりと身体を起こすと
横になったままに彼を見る私の頭を撫でた
二宮「Aちゃんもね」
「え？」
二宮「朝食、リクエストある？」
先にベッドから抜けた彼は
「えっ、あっ！私が作ります」
慌てて起き上がった
私の頬に小さなキス１つをしてとめた
二宮「今日はAちゃんにとって長い１日になるだろうから少しでもゆっくりして？」
いつも謎解きのような彼の言葉
「それって…どういう…」
二宮「秘密」(笑)
教えてくれないとわかっていても知りたいに決まってる
「教えてくださいっ」
二宮「あと数時間後にはわかるよ」(笑)
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作者名：2-38
| 作成日時：2019年10月14日 11時
