《完結》彼のスーツを脱がす時９【NINO】 (ページ19)

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259.王道←11/14 ページ19

二宮「Aちゃん？」(笑)

まじまじと見つめていた私に彼が笑う

今日、二宮さんと初めて乗った電車

ほぼ車で移動する彼しか見たことがないだけにとても新鮮で

平日の午後

スーツ姿に太陽の光がさしこむ彼は本当に美しい

「はっ、はい」

覗きこまれた瞳は光に透けて薄茶色が琥珀色に揺らぐ
　
二宮「そんな緊張されると緊張移る」(笑)

緊張もだけど

彼の美しさに見とれていた方が正解

「ごっごめんなさい」

電車の中だからだろうか堪えるように笑う彼は緊張しているようには全く見えない

二宮「どう？いい感じ？」

首を少し傾げて

スーツ姿を見せる彼

清潔感のある濃紺に無駄のないシルエット

ネクタイは淡いブルー

文句なしに…

「はい、格好いいです！」

正解なはずの答えに何故か彼は耳を赤くさせて笑う

「二宮さん？」

涙目になりながら私を悩ましげに見る彼

二宮「いや、そうじゃなくて、娘をやってもいいって安心してもらえそうな見た目かなってこと」(笑)

そう

「へっ？あっ…それは勿論です」

今日は私の母に結婚の挨拶に行く

私も二宮さんも忙しくやっと都合のついた日が今日だった

二宮「よかった」(笑)

最寄り駅から徒歩圏内な実家はけしてお洒落なマンションでもなく

年期の入った外観

二宮さんの住むマンションとはあまりにも違い過ぎて

でも、それが恥ずかしいとかではないけど今更ながら外でってもっと押せばよかったなって

「えっと…ここなんですけど」

彼が私を好きになってくれる前の自分が残るテリトリー

それを彼にさらけ出す事に気恥ずかしさがある

二宮「行きましょうか？」(笑)

ぎゅっと握られた手

「はい」

オートロックを合鍵に抜けると部屋のインターフォンを押した

母「はーい」

母の声がスピーカー越しに聞こえて

「私」

今までに母の声にこんなにも緊張することなんてなくて

母「今開けるわね」

それを見る二宮さんはやっぱり余裕な笑顔に意地悪く笑う

二宮「お母さんと声似てるね」

「そうで…」

ガチャガチャっと解錠する音に止められた言葉

母「お帰りなさい」

開けられたドアの先に見えた久しぶりに見るお母さんの笑顔

「ただいま」

私から隣にいる二宮さんに視線を向けたお母さんはにっこりと笑った

「紹介します、お付き合いしている二宮さんです」

二宮「はじめまして、Aさんとお付き合いをさせていただいております二宮と申します」