258.虹の誓い←11/8 ページ18
オーナーとの電話を切って
流石に直ぐに二宮さんのもとへとは行けなかった
握りしめた手に通話時間が表示された画面
この数分でオーナーが私にくれたものへの感謝なんて伝えきれるわけがない
見上げた視界には真新し
だけど
オーナー
お祖父ちゃんの想いが見えて
私はこの場所で自分の目指す"テーラー"なる
それがこのお店に導いてくれた人達への恩返しになるから
記憶にないこの写真
お母さんが仕立ててくれた花柄のワンピースを着た笑顔の自分を指先に触れる
皆に
守られた笑顔…
「笑わなきゃ…」
そう
私は笑顔でいなきゃいけない
泣いて何かが変わるわけじゃない
ハンカチに涙を拭うと閉じた目蓋に大きく深呼吸をした
お店を出て直ぐの場所にあるコインパーキング
二宮さんは車の中ではなく外
車にもたれ掛かるようにして立っていた
二宮「へーき？」
何故だろ
「はい」(笑)
二宮さんのその優しい笑顔を見るだけで
二宮「おいで」
強くしめたはずの涙腺という名の蛇口が直ぐに緩んでしまう
「…」
立ち止まったままに動けないのは
きっと彼の香りを感じてしまったら涙が止まらなくなるから
二宮「Aちゃん？」
「甘やかさないでください」
私の言葉に一瞬目を見開くと
二宮「それは無理」(笑)
朝日よりも眩しい笑顔に笑う彼
私に歩みよると
「っ」
ゆっくり
だけど強く私を抱き締めて
二宮「昔…母さんが言ってた」
柔らかな手で優しく頭を撫でた
「お母さん？」
二宮「本当のね」
"本当の"…彼が10歳の時に亡くなったお母様
「何て？」
二宮さんにそっくりだって
そんな事を思ったら屈託のない笑顔に私を呼ぶ母の顔が頭に浮かんだ
二宮「"虹を見たければ雨は我慢しなきゃ"って」
幼い二宮さんにそう言った彼のお母様の言葉は今も彼の中でしっかりと生きている
二宮「ずっとね？笑うためには涙をのめって事なんだって、泣く事を我慢しなきゃいけないって思ってたけど」
ゆっくりと離れた身体に
二宮「綺麗な虹を見るには雨は不可欠でさ」
彼は私の顔を覗きこみ
二宮「我慢じゃなくて…必要なんだって」
私の流れる涙を見て優しく微笑む
二宮「Aちゃんが本当の意味で幸せだって思うためには泣く事も必要だって」
「二宮さんって………本当に…意地悪」(笑)
二宮「どっちが意地悪だよ」(笑)
「え？」
二宮「貴女がいつだって安心して泣ける場所はここだって…わかろうね？」
「っ…はい」
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作者名：2-38
| 作成日時：2019年10月14日 11時
