《完結》彼のスーツを脱がす時９【NINO】 (ページ16)

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256.恋敵【side NINO】ページ16

大野「…思ったよ」

眼鏡の上の隙間から上目遣いに迷う事なく言った

「なら…」

この人にとっての彼女の存在は特別なんだって

大野「思ったけど…"恋人"も"夫"も俺の今のアイツにとっての"存在"は負けてるとは思わない」

唯一無二の存在

彼女の中で絶対的に揺るがないその場所

大野「寧ろ恋人も夫も代わりがきくからな」(笑)

俺に向かって言ったに違いないその言葉

彼女にとって、俺はいつでも代替えのきく存在

大野「Aの中で俺はずっと特別な存在でありつづける」

そしてこの人は変わる事なく彼女が敬意敬慕する存在

大野「別れのリスクがあるパートナーよりもずっとアイツの道標にいる存在でいたいって」

「別れない事を考えればいいんじゃないの？」

大野「俺の一番はコレ…二番目でいいなんて女いないだろ？」(笑)

そう言ってスーツを指差した

大野「仮にAが俺に惚れて…それでもいいってなったって、それはアイツの本当の幸せじゃないし、アイツは二番目にしていい女じゃない」

スーツが一番

だけど彼女を二番目になんて出来ない

そんなんじゃ

永遠に叶わない想いだと自分で自分を苦しめているようにしか思えない

「相当歪んでんな」(笑)

大野「お前に言われたくない」(笑)

背中に回りジャケットのラインを確認をする大野さんの表情は見えないけど

大野「…俺にとってのAも…宝物なんだ」

どうやったってその声は愛しいものへの愛に満ち溢れ

大野「きっと、恋より愛なんだって」

彼女が二番目なわけじゃない

彼女はフィールドが違う場所でこの人にとっての一番なんだって

大野「おし…問題はなさそうだね」

独り言のようにそう言うと俺の肩からスーツのジャケットを滑らせ脱がせる

大野「出来上がりは予定通りですけど、一応櫻井さんに連絡いれます」

「すみませんね」

手際よく道具を片付け

スーツを丁寧にしまうと

大野「二宮さん？」

社長室のドアの前に振り向く大野さん

「はい？」

この人と俺の共通点を彼女以外にもう一つ見つけた

大野「一生俺には勝てないよ」(笑)

こういうところだ

「…は、どの口が言うんだか」(笑)

独裁主義者とまで言った大野さんが

何故彼女にすら打ち明けてはいない秘密を

宝物とまで言った彼女より先に俺に話してくれたのか

それは

大野『Aが一番に傷つかない方法をお前なら見つけられるって思ったから』