255.君は宝物【side NINO】 ページ15
「それは単なる家族愛？」
深夜の社長室にいい歳なおっさん二人が鏡の前に立つ
大野「違うってわかって聞いてんだろ」(笑)
なかなかシュールな画だと思う
事の始まりはこうだ
大野さんのお店を彼女に譲って欲しいと
彼女のこれからも含め相談しに行った日
全てを聞いた
不思議と驚きよりも納得した方が大きかった
それは彼女との結婚も考えてると話した上でのこと
彼女にプロポーズをする時にはスーツでと考えていた
そして仕立ててもらうなら大野さんのスーツだとも
それは彼女がきっと世界一いいスーツだと思うものが大野さんのスーツだろうって
それだけの理由だった
だけど
全ての事があきらかになりスーツを仕立ててもらうなら大野さんのスーツだと絶対的に思った
勿論、大野さんにはそれは言っていないけど
何かを察したかのように
スーツのオーダーを承諾してくれた
そしてあの店を彼女に譲る意図は初めからだったけど
言えなかった真実をこのタイミングであかすことも承諾してくれた
仮縫いの調整の日
大野テーラーでは改装業者が入り作業はもう出来ないからと俺の会社までわざわざ出向いてくれた大野さん
流石というべきなんだろうか
動きすら演出のように計算され無駄がない
そしてどの所作も彼女と重なった
正しく言えば彼女が大野さんにそっくりなんだろう
ほとんど手縫いでしあげる
採寸から型紙、裁断、縫製全工程を他の職人に依頼していない
それを一人でこなしているのもまた大野テーラーの特徴だと
そこに特例でいた彼女
大野「好きだよ」
肩口の調節に糸を引き独り言のように答えた大野さん
鏡越しに見ると大野さんも俺をジッと見て
そして呆れたように笑った
大野「お前みたいな独裁主義な変わり者になんて渡したくないくらいにね」
独裁主義ねぇ…
よくお分かりで
大野「じーちゃんの宝物じゃなかったら間違いなく女として惚れてた」
彼女の事を思う大野さんの目は至極優しく
その言葉に嘘はないだろうけど
貴方が彼女を大切に想うのは
彼女が唯一無二の"貴方の宝物"だからだろう
「いやいやいや、惚れてんだろ？(笑)従妹なら法律上でも何等問題ないのに自分のものにしたいって思わなかったわけ？」
そう
兄妹なら叶わなかったその関係も
従妹なら
その一線を越えなかった理由が何処にあるのかわからなかった
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作者名：2-38
| 作成日時：2019年10月14日 11時
