241.スイッチ ページ1
「……………………ん」
ぼんやりする意識
いつの間にか眠っていたらしい
目蓋をあけると大きなベッドには私一人
上半身を起こすとベッドの装飾に改めて大きな溜め息が出た
何もかも桁違いというか
こんなホテルで一晩過ごせた今も夢の中にいる感覚はぬけない
ベッド横に私のために二宮さんが置いてくれたのか
ガウンが置かれていて
着るものも見つからないしそれに袖を通してウエストの紐を簡単に結ぶと
ベッドから抜け出した
昨日のこの部屋での記憶は二宮さんの姿しかほぼなくて
どういう間取りかがわからず恐る恐る寝室から出ると二宮さんの話声が聞こえた
電話で誰かと話している様子だったから
邪魔にならないようにと静かに行方不明なドレスを探す
ふと目に入ったボタン
照明のスイッチでもないだろうし
何のボタンだろうって見ていると
二宮「バトラーを呼ぶボタンだよ」
背後から聞こえた声に心臓が大きく跳ねあがる
「あっ、おっおはようございます」
振り向くとそこにはユルユルのTシャツにダルダルのズボン姿の彼
二宮「おはよ」(笑)
昨夜の王子様の彼とは180度真逆
でも…
二宮「Aちゃん？」
いつもの
「あの…」
いつもの二宮さんだ…って
二宮「ん？」
「ぎゅっ…てしていいですか？」
彼は私の言葉に驚いたように目を見開くと
朝から高い天井に響く声に笑う
二宮「いいよ、おいで？」(笑)
その笑顔に羞恥よりも先に胸がぎゅーって苦しくて
彼の胸に顔を埋めるように抱きついた
彼の少し低い体温は心地よく
彼の香りは苦い煙草の香りすら甘くさせる
そして身体に伝わる彼の鼓動に自分の鼓動が加速する
それをどうにか逃がすように彼の背中にまわした手に力をこめた
二宮「Aさん？」
両頬を包まれ向かされた顔
「はい」
二宮「朝食食べたら出発になるけど大丈夫？」
「え？あっ、二宮さん今日帰国ですか？」
それはそうだよね
きっとさっきの電話も仕事だったに違いない
二宮「うん」
私は来週帰国するように二宮さんが飛行機を手配してくれている
当たり前にまだ部屋の片付けも終わっていないし
オープニングパーティー後はこちらにオーナーが来ているし、部屋の片付けはそれからやればいいって
また、少しの二宮さんとのお別れ
私の気持ちとは裏腹に何故か二宮さんは嬉しそうに笑う
二宮「Aちゃんも一緒にね？」(笑)
「……………え？」
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作者名：2-38
| 作成日時：2019年10月14日 11時
