219.新境地←10/5 ページ10
イギリス
ロンドン中心部
メイフェアにあるサヴィル・ロウ
オーダーメイドの名門高級紳士服店が建ち並ぶ一角
まだ内装業者の人がひっきりなしに出入りする店内は私にはまだまだ理解出来ない言葉ばかりが行き交っていた
現地のスタッフさんに日本語の堪能な方がいたのは私には大きな救いだったけど
櫻井「Aさん」
「櫻井さん」
そう、櫻井さんがこちらに度々様子を見に来てくれる事が一番心強かった
櫻井「他に変更点はないですか？」
「はい」
実は現地での交渉や宣伝、所謂マネージメントは全て二宮さんの会社が一括して引き受けてくれた
「すみません、毎回来ていただいて」
私もだけど、オーナーはビジネス事には疎い
櫻井さんとは基本メールのやり取りのみだけど
何か問題があれば小さな事でも直ぐに今回みたいにイギリスまで来てくれる
櫻井「いえ、これを口実に観光できるので遠慮なく呼んでください」(笑)
「ありがとうございます」
櫻井さんがロンドンに来た時には仕事終わりに一緒に食事をする
乾杯っとグラスを合わせたお店は櫻井さんのお気に入りのお店で
コの字型のバーカウンターのみの小さな空間
炭火焼きグリル
フレーバーを凝縮した小皿料理
ロンドンの食文化はイギリス料理というよりも東京の食文化に近い
色々な国籍のシェフ達が集まる食の都
このお店のオーナーもイギリス人ではない
だけどそれが異国民な私には逆に気の休まる場所でもあり
たまにお一人様できたりもする
櫻井「2ヶ月あっという間だね」
もう2ヶ月
仕事の上ではその感覚なのは間違いない
「本当、毎日忙し過ぎて記憶がないくらいです」(笑)
だけど
二宮さんに会えない時間は長くて
時に寂しさは薄れるどころか
色濃く心を浸食していく
櫻井「大丈夫？」
「え？」
櫻井「いや、顔色もあまりよくないから」
「歳ですかね」(笑)
櫻井「眠れてる？」
「実は勉強することもたくさんあって、なかなか」(笑)
お店の事は櫻井さんも含めプロフェッショナルな方に頼れるぶん余裕も持てたけど
スーツの勉強にはきりはなく
オーナーが昔お世話になった職人さんのお店に勉強に行っている時間もいれると
削れるのは睡眠時間ぐらいだった
グラスを置いた櫻井さんはいつもの事ながらスマートにお会計を済ませると
櫻井「送ります」
私を家まで送り届けてくれた
そして決まった時間にスマホの画面に彼の名前が現れる
「はい」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2316人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：2-38
| 作成日時：2019年9月22日 9時
