彼のスーツを脱がす時８【NINO】 (ページ7)

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216.好きだから←10/1 ページ7

松坂「半年間……彼とは？」

「…会いません」

その言葉に嘘はないけど誰かにそれを口に出して断言すると尚更に寂しさが増す

紅茶を一口口にしてカップをゆっくり置く松坂さん

松坂「すみません…俺が感情的になったせいですよね」

「違います……って言ったら嘘になっちゃいますね」(笑)

松坂「Aさん」

「今の私が何を言ってもきっとそれは真実じゃないと思われる、それが現実だとわかってます」

それは私と二宮さんの関係性もあるけど自分への価値だとも思う

例えば私が二宮さんに並ぶようなステイタスを持っていたならきっと見方は変わったんじゃないかって

「今の私は彼に幸せにしてもらうばかりで…彼と並んでも自分を変わらず持ってられる女性でなきゃ、彼を本当の意味で幸せにしてあげられないから」

彼にコントロールされていると思われるような頼りない人間では駄目なんだって

そこに嘘も真実も関係はない

「彼と向かい合う関係じゃなく、彼と同じ方を向いて並んで歩ける女性になれるようになりたい」

松坂さんや

オーナーに言われて気づく自分はまだまだ彼を幸せにしてあげられる力がないんだって思いしらされた

私をじっと見る松坂さんは真剣な目で

だけどやっぱり何処か不安げで…

「なんて、私がそんな女性になれるかもわかりません」(笑)

松坂「参ったな」(笑)

「松坂さん？」

松坂「そんな風に言われたらますます貴女が好きになります」

サラッと言われた言葉はあまりにも自然で

「へ？」

間抜けな声に彼は目尻にクシャっとシワをよせて照れたように笑う

松坂「すみません」

松坂さんの人柄なんだろうか

松坂「Aさんを困らせたいわけじゃないんです」

困るっというとまたそれは違って

松坂「貴女が好きだから」

真っ直ぐなその想いは素直に心に入ってきた

松坂「心配なんです」

だけど私には松坂さんにこの気持ちを何て言えばいいのか

上手く伝える言葉が見つからなかった

松坂さんはジャケットの内ポケットからカードケースを出すと

出した名刺の裏に何かを手早くメモをし

松坂「イギリスには実家があるんです」

それを私に差し出した

「え？」

名刺の裏にはイギリスの住所と電話番号

松坂「何かあったら直ぐに、父にも言っておきますので」

正直、海外には長期滞在したこともなく日本人はほぼいないであろう土地に

「ありがとうございます」

松坂さんの気持ちは嬉しかった