彼のスーツを脱がす時８【NINO】 (ページ24)

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233."owner" ページ24

大野「"オーナー"…か」(笑)

寂しげに

そして何処か苦し紛れに笑っているようにも見えるオーナーの笑顔

「あのっ」

私が何かを言ってしまったんだろうか

その問いかけすら言葉にならない私にオーナーは優しく笑って

そして私の心臓をとめた

大野「…"智"って呼んでみて？」

サトシって…

「えっ、そっ、そんなの無理です」

オーナーと出会って今の今まで一度だって下の名前で呼んだことはなくて

大野「本当に？」

だけど

オーナーのその瞳は真っ直ぐで

その小さな願いすら叶えられない私は今までどれだけオーナーに助けてもらってたかって

だから…

「…さ……さ…とし…さん？」

オーナーの目が大きく見開き

そして何故か泣きそうに笑う

私はその意味にけして気づいてはいけないって

オーナーは頬にあった手をスルリとおろすと私の肩にその手をおいて俯くように顔を隠す

オーナーの震える肩にどうしていいかわからなくて

持っていたカップをぎゅっと握りしめると

急に聞こえてきた笑い声

「え？」

涙目になりながら笑いにたえるオーナー

大野「変なの」(笑)

「なっ！？オーナーが呼べって言ったんじゃないですか！！」

からかわれた？って思う感情に何故か安心して

オーナーの肩を叩こうと振り上げた手を

大野「わるかったよ」(笑)

容易く受けとめ

大野「俺はさ、ずっとお前を見てるよ」

握られるからまた惑わされる

大野「でも、お前には…もう俺は必要ない」

「何………言ってるんですか？」

大野「理由は日本に帰ったら探せ」(笑)

「探すって何をですか」

大野「ヒントはお前の母さん」

急な言葉に思いもしない母が現れ

「お母さん？」

オーナーの言いたい事が全くわからない

大野「そろそろ帰るか」

飲み終わったホットワインのカップをとられ

「オーナー、ヒントが母ってどういう事ですか」

オーナーはゴミ箱にそれをヒョイっと入れる

大野「それを見つけるのがお前の役目」

誤魔化されないっと食い下がる私にオーナーは呆れたように笑った

「オーナーっ」

大野「やっと会えるんだろ？社長さんに」

「えっ、あ………どうでしょ、帰国するのは伝えてますけど」

大野「言ってねーの？何だよそれ」(笑)

「そんな事言われても」

大野「まっ、心配することもないか」

「え？」

大野「お前のいる場所なんてお見通しらしいから」(笑)