彼のスーツを脱がす時８【NINO】 (ページ22)

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231.マシュマロページ22

「オーナーおめでとうございます」

私の声にビクッと肩をあげたオーナーは会場のある屋上にいた

遠くにはツインタワーが綺麗に見える

大野「ありがとう」

ビールの入ったグラスを１つ差し出すと
気の抜けた笑顔を見て安心した

「主役がこんなところにいていいんですか？」(笑)

大野「主役なんて…お前の彼氏に言っとけよ、こんな大袈裟なパーティーなんて聞いてねぇって」

「伝えておきます」(笑)

私の言葉に不服そうに唇を尖らせるとビールを一気に飲みほしたオーナーは

何処か遠くを見つめた

11月のイギリスは日本より寒くて

冷たい風が頬を赤く染める

大野「…あのな、A」

「はい？」

大野「いや、何でもない」

未来は明るいはずなのに

大野「日本に戻ったら店頼むな」

「オーナーが戻るまでには完璧に片付けておきます」

何故か

大野「ん」

小さくそう答えたオーナーの笑顔は寂しそうで

だけどそれは私の思い過ごしだと思わせるように

大野「A、これから祭り行かね？」

マシュマロのような柔らかな無邪気な笑顔のオーナー

「お祭りってガイ・フォークス・ナイトですか？」

大野「名前までは覚えてない」(笑)

"ガイ・フォークス・ナイト"とは

イギリスではハロウィン以上に大事なイベント

「お疲れじゃないんですか？」

その起源は

17世紀前半、プロテスタント教徒の英国王ジェームズ1世を暗殺しようとして国会議事堂に爆薬を仕掛けたカトリック教徒の過激派たちの陰謀

この中の一人が"ガイ・フォークス"

この暗殺が未遂に終わったことから、イギリスでは毎年11月初旬にかがり火をたき

花火を打ち上げて平和を祝う習慣ができた

１１月５日前後の週末はイギリス各地で花火が打ち上げられる

ガイ・フォークスに見立てた仮面を被ったり
その人形を作って最後は大きな焚き火に入れたりと日本でいうハロウィンよりかはかなりディープな世界だったりもするけど

移動式遊園地や食べ物の屋台などがあったりと楽しそうだ

大野「こっちの店が軌道にのるまでは日本には戻れないし、Aとゆっくり顔見て話す時間も暫くはないだろうから」

今夜はロンドンでも花火が見れる

そもそも、今夜のオープニングパーティーのイメージもガイ・フォークス・ナイトに因んでなのかと思った

「オーナー」

大野「行こ？」

急に握られた手

「でもっ」

大野「ほらっ」(笑)

「えっ！？ちょっ、待ってください」