彼のスーツを脱がす時８【NINO】 (ページ12)

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221.シルエットページ12

櫻井さんは今朝帰国してしまったけど

オーナーが週末こちらに様子を見にくる

異国の地での孤独感は予想以上で

それを勉強や仕事の忙しさに誤魔化す毎日

疲れに動きを止めお店をぼんやりと眺める

今日は午前中は店内の内装の最終確認に合わせインテリアやオブジェの搬入の同伴

オーナーから送られてきたデッサン入りのメモを見ながら確認する

それは不思議な感覚で

オーナーが平面に描いたものが目に見えて現実の世界に立体化されていく

オーナーが思い描いた世界にワクワクする

自分もいつか…

お昼休みにと誰も居なくなった店内は静寂と喧騒の狭間

まだ生地も陳列されていない棚に手のひらを這わせ

何も着ていないトルソーの肩に手を置き

目蓋を閉じて頭の中に描く

『彼』…を

トルソーのシルエットに描くスーツを身に纏う

…二宮さん

ドアが開かれる音に

振り向くと

逆光に見えたシルエットより

その優しい声で誰だか心臓が反応した

松坂「Aさん」

「まっ、松坂さん！？」

ダークブラウンのジャケットにハイカットネックのカットソー

長身な松坂さんだからこそ似合う服装

松坂「会えてよかった」
　
洗練された装いとは逆にはにかんだ笑顔は可愛いくて

「どうして…」

その笑顔にほっとした

松坂「ずっと気になって…心配で…一目でいいから顔がみたいって」

だけど松坂さんのその言葉に今度は危険信号が点滅する

「え…………っと、よくわかりましたね？オーナーに？」

松坂「いえ、新しいお店だと聞いていたので直ぐに見つけられるだろうって」

「確かに」(笑)

松坂「でも日本人初として現地でこれだけ話題になっていれば探さなくとも直ぐに見つかりました、わからなければ片っ端から探そうと」(笑)

笑顔から何か躊躇うように言葉を飲みこんだ松坂さん

「松坂さん？」

松坂「…夕飯に誘いたいところですけど、駄目ですよね」

櫻井さんはある意味仕事もあるし二宮さんの考えもあるからいいとしても

「…ごめんなさい」

松坂さんに罪はないけど、駄目だって

せっかくここまできてくれたのにそのまま帰してしまうのは申し訳ないないけど、お店でお茶を出すにも…この状態じゃ何にも用意できない

ない頭を巡らせる私に

松坂「"クリームティー"も駄目ですか？」

松坂さんの提案

「それなら」

お茶だけならっと

松坂「美味しいお店があるんです」

その優しい笑顔に応えた