彼のスーツを脱がす時７【NINO】 (ページ4)

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184.客観的視野【side NINO】ページ4

「おはよ」

Aちゃんのマンションを出ると

櫻井「……おはようございます」

見慣れた車が道沿いにハザードランプを点滅させ停まっているのが見えて

車から出てきた翔ちゃんは今朝も爽やかを絵に描いたようなスーツ姿

が、それに似つかわしくない笑いをこらえるように後部座席のドアをあけた

「なに」

櫻井「…いえ」(笑)

車に乗り

発進した車

チラリと見たバックミラーには笑う翔ちゃんの目が見えて

「言いたい事はわかってますけど一応お伺いしますよ？」

櫻井「では、僭越ながら…女性がお付き合いする男性によって変わるとはよく聞きますが…」

「いいんだよ」

櫻井「そのスーツ、Aさんですか？」

「よくわかるね？」

櫻井「"社長のため"だけに仕立てたものだって見てわかりますから」

「…ふーん」

櫻井「社長？」

「前々から気にはなってたんだけどAちゃんってテーラーとしてはどうなの？」

櫻井「っと言いますと？」

「いや…大野さんが主体でしょ？弟子に師匠って感じみたいだけど、Aちゃんのスーツって俺には完璧なのよ」

彼女が個人的に客をとらないような気もするのはまだまだっていう意識なんだろうけど

あのオーナーが自分の客をまわす時点で腕は認められてるんじゃないかって

「だからテーラーとしての腕は一人前じゃないの？って」

櫻井「Aさんはかなり腕のいいテーラーですよ、大野さんの元でやれるのは彼女ぐらいなんだと思います」

「あのおじさん、そんなすごいの？」

テーラーの世界は俺には皆無な事だ

櫻井「社長」(笑)

「資料で経歴も見たしあの業界では有名なのはわかるけど」

櫻井「海外の顧客がいるくらいですからね」

「結論」

櫻井「はい」

「彼女は独立できるだけの腕はあるんだよね？」

俺専属にしたい

それはエゴだとわかってる

でも、それを差し引いたとしてもテーラーとしての彼女は魅力的で

櫻井「社長がそれを聞くんですか？」

彼女がそれを望むなら

ビジネスとして成立させたい

「いや…あの子の事になると客観的な目が持てなくなる自覚はあるから念のため、ね？」

だけど

どう口説きおとすか

彼女ほど難しいターゲットはいない

櫻井「社長はいつでも正しいですよ」

「俺が正しいんじゃないよ」(笑)

櫻井「社長？」

「貴方が俺を正しい人間にしてくれてるの」

櫻井「僕まで口説かないでくださいよ」(笑)

「もう、落ちてるくせに」(笑)