68.かけ違えたボタン←7/29 ページ9
「二宮さん、意地悪です」
背を向けたままに慌てて掛け違いになったボタンを直す
二宮「意地悪はどっちよ」(笑)
彼の言葉に顔だけ振り向くと
「え？」
肩に置いた手に人差し指だけがわざとたてられてたから
二宮「またお預けされた上にイケメンくんに"また飯いこーね"って」
頬に彼の指がクイとささる
「それはっ…」
いたずらっ子な仕草
二宮「それは？」
声色は甘いのに
蔑む瞳は射抜くように強くて
「それは生田さんは生地問屋の方でオーナーとは幼馴染みで私も前にお二人の食事に誘ってもらっただ…」
何の弁解を彼にしているのかわからないけど何もないから何もないわけで
それでも何故か二宮さんの視線にドギマギしてしまう
二宮「駄…目」
「え？」
二宮「これからは駄目だよ」
「二宮さん？」
二宮「男だけしかいない場所に貴女１人で食事にいくなんて」
彼の独占欲に胸がキューと苦しくて
「だっ、大丈夫ですよ」(笑)
心配することもない現実に心配してくれる彼が愛しい
二宮「大丈夫なんてどうして言い切れるの？」
「だって、私なんか」
二宮「何かじゃない」
グイっと両手に包まれた頬が逃げ場のない視線に熱を上げる
二宮「少なくとも俺は今の貴女に泣かせるようなことしたいって思ってる」
ドキンっと大げさに高鳴る鼓動に身体中の血液が沸騰寸前だ
二宮「貴女は俺が好きになった人だよ」
そんな目で
二宮「自覚して？」
そんな事言われたら何も言えなくなる
「はい」
そして彼という特別な人に特別とされる自分が愛しく大事に思えた
彼の手のひらの中で小さく頷くと
優しく笑う二宮さん
額に小さく口づけると解放された頬を自分の手でおさえた
二宮「今夜は？」
ワイシャツのオーダーが終わる頃タイミングよく櫻井さんの運転する車が店の前に停まった
「今夜はとくには…新規のご依頼がなければ20時には家に帰ります」
二宮「なら夕飯一緒に食べよう」
今夜も二宮さんに会えると思うと自然とにやけてしまう顔
それを隠そうとした私の手首を掴む二宮さんはきっと何もかもお見通しで
「っ…はぃ」
何処までも彼の虜にされていく
二宮「迎えに行くから待ってて」
「…はい」
ゆっくりと下ろされ解放た手首の代わりに
ポンポンと頭を撫でられ
彼は流すような甘い視線だけを残り香のように残して店をあとにした
力の抜ける身体に
ただ視線だけで彼を見送る事しかできなかった
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作者名：2-38
| 作成日時：2018年3月21日 17時
