彼のスーツを脱がす時 3 【NINO】 (ページ31)

今日:6 hit、昨日:12 hit、合計:686,150 hit

90.甘やかす←10/10 ページ31

二宮「Aちゃんとの時間が大事だから洋服までプレゼントしたんだけど、意味わかってる？」

フォークを握ったまま止まる私の手を包み込む彼の手

「え…」

彼に触れられると何も考えられなくなる

それは昨夜を境に余計に色濃くなったような気がした

彼がジェスチャーに唇を"あーん"っと開くから

おずおずと唇を開くと

重なったままの手にイチゴをさしたフォークを

口に入れられた

甘酸っぱい香りと舌に広がる味に

二宮「それなら家に帰らなくていいでしょ？」

彼は意地悪く笑う

「は…い」

二宮「お店までは送っていくよ」

そして何処までも私に甘い彼

「ありがとうございます」

それまでずっと二宮さんを独占出来ることに胸が高鳴る

二宮「…食べて」

「はい」

彼の手から解放された手に幸せのかたまりのようなフレンチトーストをまた口にした

「二宮さん、お料理上手なんですね」

二宮「父親が調理師の先生だからね」

「えっ！？」

二宮「意外？」(笑)

「はい」(笑)

二宮「昔から目で見て覚える事が得意だったから料理も自然に覚えたよ…寧ろ覚える気もなかったくらい」

「本当に美味し…」

二宮「Aちゃんが気に入ってくれたならコイツも報われたかな」

「え？」

二宮「こっちの話…仕事の支度してくるから食べてて？」

「あっ、はい」

優しく撫でられた頭に彼はスツールから立ち上がると階段をあがっていった

お父様が調理師の先生…意外だった

PCというか理系というか

彼のイメージからしたらお父様もそういう分野に特化した人なのかと思ってたけど

でも彼の職人気質なところはきっとお父様から譲り受けたものなんだろうな

こうやって

少しずつだけど彼の事を知っていける

そう思うと幸せで

口にした料理にさらに頬がゆるむ

食事を済ませると食器を片付けていたところに支度の終わった彼が戻ってきた

二宮「そのままでいいのに」(笑)

ヴィンテージのデニムのシャツにブラックのパンツ姿で現れた二宮さん

「ご馳走になったので片付けくらいはやらせてください」

まるで大学生のようで

二宮「ありがとう」

このマンションやいくつもの事業に投資できるような企業のトップにはどうやっても見えない

二宮「終わったら送っていくよ」

「はい」

カウンターのスツールに座るとタブレットをいじりながら唇をとがらせカウンターを空いた手の指先にリズミカルに叩く

仕事に真剣に向き合う男性はいつだって素敵だ