彼のスーツを脱がす時 3 【NINO】 (ページ12)

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71.カノジョ←9/18 ページ12

二宮「お腹はいっぱいになった？」

お店のお料理は気取らずお酒に合う家庭料理が中心のお店だった

「はい、何れも美味しくて食べ過ぎちゃいました」

女将「それはよかった」

女将さんの幸子さんも"お母さん"のようで

カウンターに並んで女将さんも話に入ってくれたおかげで緊張せずに食べれた

二宮「Aちゃんは明日も朝早いよね？」

スマホを見た二宮さんに

「はい、いつも通り…早いです」

もう楽しい時間の終わりが近付いてると寂しくなる

女将「あら、そうなの」

「あっ、でもそんな早朝にとかじゃないですよ」

女将「テーラーさんも大変ね」

二宮「それならそろそろ行こうか、幸子さんお会計いい？」

ここは二宮さんの行きつけのお店だし私がでしゃばらずに二宮さんにお会計をまかせた方がいいよね

女将「はいはい」

出しかけたお財布をバックに戻すと席を立つ二宮さんに続いて私も席を立った

二宮「それじゃご馳走様」

「ご馳走様です」

女将「ありがとうございます、Aちゃん、またいらっしゃってね」

「はい、必ず」

いつもはビールだけど日本酒なんて久しぶりに飲んだからお店を出るとふわふわした身体に夜風が気持ちいい

二宮「タクシー…って思ったけど酔い醒ましに少し歩こうか」

一歩前を歩く二宮さんが不意に振り向き悪戯に笑う

心臓がドキンっと跳ね上がるけど

タクシーより歩いて

その方が少しでも彼と一緒にいられると考えると嬉しい

「…はい！」

二宮「はい」

え…

後ろ手に手を出され

それは何の事かわからなくもないんだけど

袖から覗く愛らしい手

「し…失礼します」

出された左手にそっと指先を滑らせると

二宮「失礼しますって貴女」(笑)

意地悪く

だけど嬉しそうに笑って私の手を捕まえるようにギュッと握った

「すみません」

恥ずかしくてうつむいた視線に自分のバックが目に入りハッとした

「あっ！お会計」

食事代を渡し損ねるところだった

二宮「律儀だね」(笑)

「だって」

二宮「"彼女"でしょ？それなら受け取らない」

"カノジョ"…その特別な響きにこんな歳になって嬉しいと思ってしまう私は馬鹿なんだろうか

何て返事をしていいのかわからない私に

彼は繋いだ手を緩めると指先を意図的に絡め

恋人繋ぎに繋ぎなおした手

「ありがとうございます」

酔い醒ましどころかますます顔は熱くなり

二宮「いいえ？」(笑)

彼の惑わすような魅惑的な笑顔に地に足がついていないような感覚だ